転生少女が落ちたのは、意地悪王子の腕の中~不器用な溺愛は何よりも甘いのです~
ああ、どうしても声が震えてしまう。

こんな森の中でユリーナと別れて本当にひとりぼっちになったら、一人で考え込んでしまってきっと冷静でいられなくなる。

日本からどれくらいの距離があるのかもわからないし、場所の名前しか、わかっていないのに……

しかしこんなに幼い少女に助けてくれと言う訳にもいかない。気丈にありがとうと告げようとした時、ユリーナの指から血が滲んでいるのに気がついた。

「ユリーナ、その指どうしたの?」

「あ、これね、さっき木が刺さっちゃって」

思い出させてしまったようだ。ユリーナは痛そうな顔をする。

「ご、ごめんね!えっと……そうだ、おまじないしてあげるね」

「おまじない?」

「うん。ここ……シェバルコ王国?でもあるのかはわからないけど」

私はユリーナの手に手をかざして、どこかへやる動作をした。

「痛いの痛いの飛んで行けー」

ユリーナがきょとんとする。私は笑顔を引き攣らせた。

「……なんて……あは……ごめん、こんなのじゃ気紛れないよね……」

「お姉ちゃん、痛くない……」

「いやあ、そんな気遣わなくても」

「ホントだよ!痛くない!お姉ちゃん凄い!」

がばっとユリーナが私の腕を掴む。

「ちゃんと見て!」

目の前に出された小さな手。そしてさっきまで赤く血が滲んでいた指には────傷が無かった。

「え、ええ……ええーっ!?」

何度も目を擦る。しかし少女の指はつるりと綺麗だ。現実を受け止めて、私の方が大きな驚きの声を上げた。
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