転生少女が落ちたのは、意地悪王子の腕の中~不器用な溺愛は何よりも甘いのです~
私はそっと、唇を噛んだ。
王妃の慟哭は、とても演技には思えなくて。愛する人が自分に見向きもせずずっと違う人を追い続けていたら……そう想像して、胸が締め付けられた。
思わずその震える背に声をかけようとしたその時、ぎゅっと腕を掴まれた。
「行くぞ」
「あ……」
エスメラルダ殿下の泣き声に後ろ髪を引かれながらも、グイードに引っ張られるまま謁見の間から出る。
くるりとグイードはこちらを振り返った。
「俺はわかっていた。エスメラルダ殿下が母を疎んでいる理由も、だから俺にもきつくあたるのだということも。
それでも……俺はあの女を赦せない。きっと一生かかってもだ。理由は何であれ、あの女がしたことは全て許されるものではない」
その顔は自嘲に歪んでいる。
「俺は、お前がエスメラルダ殿下に向けた目を見て……嫌だと思ってしまった。本当に……器が小さい男で悪いな」
ハッとした。私がエスメラルダ殿下に歩み寄ろうとするなんて、いい気がしなかったに違いない。
こんなに苦しそうな顔をさせているのは私だ。
「わ、私こそごめんなさい、許したとか、そういうわけじゃなくて……ただ」
何を言っても言い訳になるとわかって、私は言葉に詰まった。それを見てグイードがふっと表情を和らげた。
「わかっている、お前はそういうやつだからな。少し感傷的になってしまっているのか……不安になってしまっただけだ。お前は俺の一番近くにいてくれれば、それだけでいい」
「……王様に言われたこと、やっぱり気になってるんですか」
「……ああ、まさか父上があんなことを思っていたなんて、な……」
グイードは複雑な表情を浮かべた。困惑、戸惑い、同様、そしてほんの少しの期待。
父と子、2人の関係が少しでもこれから改善すればいい。そう切に願わずにはいられなかった。
部屋に戻ろうと歩き出した時、唐突に、カツンと背後で細いヒールが床を叩く音が響いて。
「───お話中、失礼致しますわ」
そう背中に突きつけられたのは、間違えるはずもない、あの鈴が振るような可愛らしい声。
王妃の慟哭は、とても演技には思えなくて。愛する人が自分に見向きもせずずっと違う人を追い続けていたら……そう想像して、胸が締め付けられた。
思わずその震える背に声をかけようとしたその時、ぎゅっと腕を掴まれた。
「行くぞ」
「あ……」
エスメラルダ殿下の泣き声に後ろ髪を引かれながらも、グイードに引っ張られるまま謁見の間から出る。
くるりとグイードはこちらを振り返った。
「俺はわかっていた。エスメラルダ殿下が母を疎んでいる理由も、だから俺にもきつくあたるのだということも。
それでも……俺はあの女を赦せない。きっと一生かかってもだ。理由は何であれ、あの女がしたことは全て許されるものではない」
その顔は自嘲に歪んでいる。
「俺は、お前がエスメラルダ殿下に向けた目を見て……嫌だと思ってしまった。本当に……器が小さい男で悪いな」
ハッとした。私がエスメラルダ殿下に歩み寄ろうとするなんて、いい気がしなかったに違いない。
こんなに苦しそうな顔をさせているのは私だ。
「わ、私こそごめんなさい、許したとか、そういうわけじゃなくて……ただ」
何を言っても言い訳になるとわかって、私は言葉に詰まった。それを見てグイードがふっと表情を和らげた。
「わかっている、お前はそういうやつだからな。少し感傷的になってしまっているのか……不安になってしまっただけだ。お前は俺の一番近くにいてくれれば、それだけでいい」
「……王様に言われたこと、やっぱり気になってるんですか」
「……ああ、まさか父上があんなことを思っていたなんて、な……」
グイードは複雑な表情を浮かべた。困惑、戸惑い、同様、そしてほんの少しの期待。
父と子、2人の関係が少しでもこれから改善すればいい。そう切に願わずにはいられなかった。
部屋に戻ろうと歩き出した時、唐突に、カツンと背後で細いヒールが床を叩く音が響いて。
「───お話中、失礼致しますわ」
そう背中に突きつけられたのは、間違えるはずもない、あの鈴が振るような可愛らしい声。