転生少女が落ちたのは、意地悪王子の腕の中~不器用な溺愛は何よりも甘いのです~
「あなたの言動と……あなたがグイードを見る表情でわかった。
いつ、どういう経緯で許嫁になったのかは知らないけれど……あなたは、グイードのことが好きだったんでしょう。いや、今もかもしれない。でもグイードはそうじゃなかった」

「……やめて」

小さく呻いたアマルダを見つめて、私は非情に言葉を続けた。

「それどころか、まるで相手にもされてなかったみたいね。私に言わなきゃいけないこととすら思われてなかったってことでしょ?」

そう言った瞬間、アマルダががっと私の首元を掴んだ。

「黙りなさいよ!あんたなんかぽっと出のくせに!!」

シルクのような白金の髪を振り乱し、私の鼻に噛みつきそうなほどに顔を近づけて叫ぶ。

「許嫁になったのは私が4つの時よ。お父様が決めたお相手だったけれど不満は無かったわ。もちろん第二王子に比べれば血筋の問題はあったけれど、王子にかわりはありませんもの。その後王位継承権が入れ替わってからも、私は当然そのままグイード殿下と結ばれるものだと思っていた。
でもあの王令があってから、突然フォン殿下の婚約相手にされてしまった。私はショックだったわ。グイード殿下も、同じ気持ちだと思っていたのに。
でもあの方は……勇気を出してお話に向かった私に無表情で『そうか』と言っただけで、それきり!」

碧の瞳を悲痛に揺らしてアマルダは胸に手を当てる。

「本当はエスメラルダ殿下とお父様から婚約のお話を伺った時、困りましたわ。でも仕方ないじゃない。家のことを考えても、これからの自分の立場を考えても、私はフォン殿下と婚約するしかなかったのよ!
迷う余地もありませんでしたわ!赤目の王子が王位を得るなんて、誰が想像ができるの!」

そして一度大きく息をついたアマルダは、幾分冷静さを取り戻した様子で媚びるような笑みを貼り付けた。

「どうせあなたはグイード殿下じゃなくてもいいんでしょう?一生遊んで暮らせるくらいのお金をあげるわ。だから早く返して頂戴、そこは元々私の場所だったのよ」

私はキーンと耳鳴りがするのがわかった。どくどくと激しく眉間が脈打つ。

グイードじゃなくてもいい?お金をあげる?返して?……グイードの隣はそんな簡単にいていいものじゃない。

高ぶる感情を抑えようと必死に深呼吸をしても意味は無く、私はかっと目を見開いた。

「あのねぇ、それはこっちのセリフよ!あなたはグイードが好きだったわけじゃない、グイードの血筋が好きだっただけね。王族なら誰でもよかったのはあなたでしょ!王になるからって手のひら返しが過ぎるって思わないの?
それにさっきから黙って聞いてれば、先に裏切ったのはあなたの方じゃん。それなのに被害者面してグイードに何かを求めるわけ?筋違いも甚だしい!」
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