ただ好きだから


私はとにかく急いで着替えると、近くに転がっていた自分のバッグを掴む。


借りていた白いティーシャツは一応丁寧に畳んで。



よし、部屋を出たら急いでお礼をして出て行こう。


勢いよくバンっと扉を開けるとすぐさま朝日が目の前に差し込む。



開けた先に広がるリビングは信じられないほど広々としていて、そして白を基調としたシンプルで高級そうな家具たちが並ぶ中、その中心にある白のソファーに腰掛けている社長が少し驚いたようにこっちを見ている。



やば、勢い良く扉開けすぎた…


でもそんな事を謝っているわけにもいかず、ツカツカと早足で社長の座るソファーの前まで行くと深く頭を下げた。



「本当にご迷惑をおかけしました。お洋服もありがとうございます。それでは失礼致します」



それだけ言うと、社長の顔を見る前よりも早く足を動かして玄関へと向かう。



後ろでは「おいっ!」なんて少し怒ったような社長の声が聞こえてきたけれど、そんなの無視してヒールを履くと急いで玄関の扉を開いてエレベーターへと乗り込んだ。
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