ただ好きだから



こんな風にして男の人に触れられたのはいつぶりだろうか。



不慣れなせいか、やけに心音が大きく聞こえて。無駄にドキドキと不思議な感覚が私を包んだ。



偽の婚約者をするに当たっていくつかの約束が私達の間で決められた。



と言っても全て彼の決めた事なんだけれど。




一つ目は婚約期間は一年という事

二つ目は私達の婚約話が会社の人間にはバレてはいけないという事

三つ目はなるべく二人の時間を作るようにする事




まさかこの三つ目の約束事が出てくるとは思っていなかったけど…咲夜はどこまでも徹底するつもりらしい。

一年間で、私達は本物の婚約者のようにならないといけない。



そうしたら、ここまで徹底してやるのはそんなにおかしな事では無いのかもしれない。



咲夜からしたら、無理に結婚をさせられてしまうかもしれないという人生に関わる大きな事で、そこまでするのは当然と言えば当然なのかも。



食べ終えた食器をシンクに運びならそんな事を考えるけれど、付き合ってもいない男女が一緒に住むなんて本当はどう考えてもヤバイ。



まぁ女性にモテモテな咲夜が私に手を出すなんてありえないだろうけど…それこそ本当に会社の人達に知れたらとんでもない事になるに違いない。



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