ただ好きだから



「大丈夫だよ、椎名なら」



そう言って私の肩をポンっと叩いた大和先輩は、爽やかに微笑み口角を上げる。



そういえば身近な人すぎて忘れてたけど、この人も相当な男前だった。朝からそんな爽やかスマイル眩しすぎる。



「お前の努力や頑張りは皆んな知ってる。自信持て」



その言葉がやけに胸に響いた。
嬉しいと思った。もっと頑張ろうとそう思えた。



学生の頃から特にやりたい事なんかなくて、それは就職活動を始めてからも変わることはなかった。



何がやりたいのか、夢とは何なのか…そんな事をグルグルと考えている事が苦痛で。



今時やりたい事を見出せる方が凄いんじゃないかと、そんな他人行儀な感情さえ生まれた



だから、正直ただ適当に受けたこの会社に受かって。いつのまにかこの仕事がとても好きになって、先輩や上司にも恵まれ。毎日一生懸命仕事が出来ている私は本当に運が良かったんだと思う。


幸せ者なんだとそう思う。



「大和先輩、ありがとうございます」



そう自然と笑顔がこぼれた。この会社に入って良かったなと。そう思えたから。



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