ただ好きだから
「そうか?別に普通だろ、お前が俺の婚約者なのに違いないんだから」
まるで当たり前かのように咲夜がそう答えるもんだから、一体何が普通なのか分からなくなる
いや、そもそも偽の婚約者を作ってる時点で普通ではないのか。
「週末空いてるか」
「今週末?」
「あぁ」
「まぁ、特に予定は無いけど」
「指輪買いに行くぞ」
「え?」
「婚約指輪、あった方が良いだろ」
婚約指輪…!?
思わずお箸で掴んでおたプチトマトがするりと落ちそうになる。
「いや、さすがにそれはやりすぎなんじゃ」
そう言った私に咲夜は軽く首を傾げると
「嫌か?付けるの」
そういう訳じゃないけど。確かにいわば偽りの婚約指輪を本当の婚約者からもらったわけでもないのに左手に付けるのは女性の夢的にどうなんだろう。咲夜だって好きでもない女性にあげたい訳じゃないだろうし。
しかも、婚約指輪って言ったらそんなに安い物じゃないでしょ……
わざわざ買う必要があるんだろうか。今時婚約指輪を貰わないで結婚する人は意外にいると聞いた事もあるし。
「嫌とかじゃなくて、婚約指輪高いし…」