ただ好きだから
そうおずおずと答えてみせると、咲夜は一瞬お箸の動きを止めた後、クスクスと楽しそうに切れ長な瞳を垂らして笑う。
「お前って、変な奴だよな」
「へ、変!?」
「あぁ、良い意味で」
良い意味で変な奴って…
「それって褒めてるつもり?」
「もちろん褒めてる」
いや、全然褒めてないでしょ。
だけど咲夜はどこか楽しそうで、その表情は会社にいる時には想像も出来ないほどだ。
「金は気にしなくていい。だから俺からの指輪受け取ってくれるか」
まるで本物のプロポーズみたいに
まるで夢の中みたいに
一瞬世界がフワフワとしたものの中に包まれて溶けていく。
思わず咲夜を見つめたまま意識だけどこかに移動していて
「答えないって事は貰ってくれるんだな」
咲夜のその言葉でハッと我に帰り、熱で火照る頬を隠すようにしてうつむいた。