ただ好きだから
デート
「どうしよう、デートって何着て行けばいいの」
クローゼットにある服を引っ張り出しては鏡の前で睨めっこして、脱ぎ捨てた服が次々とベッドへと積み上げられていく。
「いや、違うじゃん!デートじゃないでしょ。服なんて何でもいいよ」
自分で言った言葉に自分で焦って、持っていたワンピースを慌ててそのまま身につけた。
何かこれじゃあまるで私が張り切ってるみたいじゃん。
いつも通り軽くメイクをした後、最近買ったばかりのグロスを付けて軽くコテで髪を巻く。
一応咲夜の婚約者として、彼に恥をかかせない程度の身なりはしておかないと。
巻いた髪を後ろでハーフアップにして結べば、ちょうど10時50分を知らせるアラームが鳴って、用意していたバックを持って部屋を出た。
「準備出来たか」
リビングに入ると、そこで待っていたのは初めて見る私服姿の咲夜。
紺色のシャツに黒の細身のパンツ。とてもシンプルなのにそれは凄く咲夜に似合っていて、シンプルがゆえか咲夜の素敵さをさらに際立たせている。
まさに大人の男性代表って感じ。