ただ好きだから

咲夜の隣へと行きそこで歩みを止めると、止まっていた店内中が動きを取り戻したみたいに物音を立て出す。


大丈夫かな私…こんなイケメンの婚約者がこんな女?とか思われてるのかな。


いや、そんな事考えてても仕方ない!もうここは開き直って行こう!そうしよう!


「婚約指輪ですと、ここからこちらの範囲になります。気に入った物がありましたらお出ししますのでお声掛け下さい」


店員さんに案内されたケースの中には、様々なデザインのキラキラとした指輪がこちらを見ている。

「好きなの選べ」


好きなのって…一番難しいよ。そもそもこれ値段書いてないし…一番安いのを選ぼうと思ってたのに。でもこんな所で一番安いの見せて下さいとか言ったら咲夜に恥かかせちゃうかもそれない。


目が回りそうなほど指輪と睨めっこをしていると、小さく可愛らしいダイヤなのに一際キラキラと美しく輝く一つの指輪で視線が止まる。


これ、可愛い…

目立ち過ぎず繊細で、だけどとても美しくて。


「これが良いのか?」


それに気が付いたのか、咲夜が私の横から覗き込むようにしてケースを見下ろす。


「え?あ、そう言うわけじゃ…」

「すみません、これ出してもらえますか」


咲夜はそんな私を無視して素早く店員さんへと声をかけてしまう。


「ちょっと咲夜、これ絶対高いよ」


慌てて耳打ちをすると、咲夜はブッと吹き出すようにして笑うと


「一向に選ばないと思ったら、またそんな事考えてたのかよ」


「だって…そんな安い物じゃないでしょ」


「気にすんなって言ったろ。どうせ付けるならお前が好きなヤツの方が俺も嬉しい」


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