Bitter
「舞…。」

「…慎太郎さん。」

♪~♪

「ちょっとごめん。もしもし。楓?」


事が、終わると何事もなく薬指を指輪に嵌め、そしてあたし達は会社の上司と部下の関係に戻る。

電話に出る後ろ姿さえ、別の人に見える。

分かってる。

この人は必ず奥さんの元に帰る。

この先何年経ってもあたしとこの人の先に明るい未来なんてあるはずない。

見えないけど

私達には、

既婚者と独身

「不倫」

という

線がひかれている。

(そんな笑顔…あたしには見せないくせに。)

なんて心のなかでは思ってても


「ピッ…ごめん。お待たせ。雨やんだしそろそろ帰るよ。」

窓を見ると既に雨はやみ、空は晴れていた。


(…奥さんから電話来たからでしょ?)


「お気をつけて!明日もよろしくお願い致します!」

あたしは

広げられた傘を畳むように、

静かに自分の気持ちに蓋をする。










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