【先生×生徒シリーズ】優しい月 暗い海─私と先生─
「好きだって言えますよ…先生のこと…」
先生の顔が一瞬変わった。
「冗談だろ?」
「冗談じゃないです」
「きみに!…きみに俺の気持ちがわかるか?」
先生が吐き捨てるように言った。
「わからないよ。私は大切な人を失った事がないからわかんないよ。先生の気持ちなんて…わかんないよ…」
「じゃー何で!もうほっといてくれ!俺に関わるな!」
先生が荒い口調で言う。
「ほっとけないよ…諦めることも出来ない。
先生が私のことを嫌いでも、私は先生のことが好きなんだもん。
好きで好きでしょうがないんだもん。
先生?何で過去にこだわるの?
何で前に進まないの?
彼女さんは先生の今の姿を見たら泣くでしょうね。
先生のそんな姿を望んでないよ。きっと…。
昔のような笑顔が素敵な先生に戻って欲しいと思ってるよ。
彼女さんの体は天国に行ったかもしれないけど、でもね、魂はちゃんと先生の中で生きてるんだよ」
先生の目に涙が光る。
血の涙じゃない。
ちゃんとした人間の涙。
先生はソファーに崩れるように座ると、声を殺しながら泣いていた。
私は先生の前に立つと、そっと腕を出し、先生を優しく抱きしめた。
小さい子供をあやすように優しく……。