【先生×生徒シリーズ】優しい月 暗い海─私と先生─
「諦めろ」
「諦めない」
「しつこいな…きみも」
「キスしてくれたら諦めます」
私は顔を上げると興奮気味に言った。
「脅迫してるのか?」
先生が椅子から立ち上がり、私の方へゆっくり歩いて来る。
そして私の前まで来ると、私の体を力強くドアの方へ押した。
"ドン"とドアに体を押し付けられる音がした。
痛みで顔が歪む。
上目遣いで先生の顔を見ると、いつもの無表情な顔だった。
先生が、両腕で私を挟むようにドアに手を突いた。
"バンッ"と激しい音が耳に響く。
私の顔に先生の顔が近付いてくる。
私はギュッと目を瞑った瞬間――。
先生の唇が私の唇に重なった。
しばらくして先生の唇が離れ、
「これで満足か?」
と、冷たく言うと、また机に戻り椅子に座るとパソコンを打ち始めた。
「私…諦めませんから」
「キスをしたら諦めると言ったろ?」
「気が変わりました」
「好きにしたらいい」
「失礼します」
私は、勢いよくドアを開けると外に出た。
心臓がドクドク高鳴っている。
今にもはちきれそうな感覚に襲われた。
急いで教室に戻った。
そして鞄を持つと学校を後にした。