限定なひと
「まぁ、あと。間島さんの部屋って五階の一番奥でしょ? 流石にそこまで背負う自信が無かったってのも、正直あります」
 そう、女子寮は五階建て。だけど、エレベーターはついてない。だから週末の買い物とか、荷物の多い日はかなり大変で、でも、その大変さに代えがたいのが家賃の安さ……って、なんで彼が私の部屋、知ってるの?
「だって、聞いてもないのに、教えてくれたじゃないですか。俺、すっかり誘われてるのかと思いましたけど」
 まさか、全く覚えてないとか言いませんよね? と彼が痛い所をついてくる。私の気まずさが表情に出ていたのか、マジかよ……、と彼は絶句した。
「いや、でもね、だからって、それとこれとは明らかに違うと思うの」
 落ち着け、私。なるべく冷静と平常心を心がけて、大人の対応で言葉を運ぶ。とにかく今、すぐにでもはっきりさせないといけないことがある。私は大きく深呼吸した。
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