限定なひと
「酔ってる割には、あんあん可愛い声、あげてましたけど」
 彼の言葉が私の耳朶に直接かかる。
「マジで、全く覚えてないんですか?」
 私がようやくギクシャク頷くと、彼は心底呆れたようにため息を一つつくと、まいったな延長かよ、と呟いた。
「わかりました。なら、こうしましょう」
 彼の親指が私の顎の稜線をゆっくりなぞると、彼がそっと顔を傾けてきた。だけど、そのまま交わした口づけはまるで噛みつくような激しさで、私はその落差に目を白黒させながらなすがままになるしかない。
 乱暴なキスの合間で、彼は吐息紛れに宣言した。

「今からもう一度抱きなおしますから、大人しく俺のものになっててください」

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