限定なひと
 そう言ってるそばから、既に不機嫌モードになっている。
「全く笑えてない。むしろ、怖いくらい不愛想なんですけど」
 昼間のあのやり取りなんか、その最たるものじゃない、というと、彼はますます不愉快そうにする。
「確かに、清住君の言い分は最もだけど、だからってあの言い方や態度はないと思うの」
 えー、正論言って何が悪いんですかぁ? とか、全然悪びれる風もなく言い切るから、思わず私は絶句する。
「なんか、えらい驚いてますね。チルさん」
 え?
「おっかしーな」
 いや。
「俺の人生の中で、今、一番笑顔の時間が長いんだけどなぁ」
 ちょっと。
「でも、チルさんって、素面で冗談言えるような性格じゃないですよね」
 ちょっとまって。
「ってことは、やっぱ思ったほど笑顔になってないんだな、俺」
 なんで?
「……ね、チルさん」
 なんで、アナタがその呼び名を知ってるの?
「あ、もしかして、今。なんで、って思ってる?」
「っ!」
 ふふ、と鼻で嗤われた。
「チルさんって、基本ポーカーフェイスだけどさ、今は昔よりもすっごいわかりやすくなってる」
 む、昔って。 
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