限定なひと
「隠しても無駄よ、さっさと言いなさいよ」
「それは、こっちのセリフですっ!」
駅前で突如として始まった痴話喧嘩は、あっという間に野次馬を呼び寄せる。
「ミネタカはね、ここ最近ずっとスランプだったの。あなたはその事、知ってたかしら? 私はそれを知っていたし、解ってもいたわ」
勝ち誇ったように言う彼女の指摘通り、彼のスランプに私は気付いてもいなかった。でも、だからといって、私に何ができただろう。
「私はね、彼がいち早くそこから脱出できるよう、環境も整えたし私の出来うる限りの協力もしたの」
スランプなんてそんなもの、乗り越えるのはあくまでも当人だし、まして端の雑音に振り回されるのを嫌う彼なら、そんなお節介は要らなかったはず。
「なのにミネタカったら、うるさい、うっとおしい、私じゃなくてあなたの方が自分を理解してるって言ったのよ」
彼女の憔悴しきった言葉と様子に、私は思わず、やっぱりな、と失笑してしまった。
「何が可笑しいのよっ! そうやって知らないふりして、本当は二人でこそこそ私の事を笑ってるんでしょっ!」
彼女が声を荒げるたびに、人垣もどんどん増えていく。
「あんたがミネタカを誑かしたんでしょっ!? 私はね、ミネタカの事なら何だって解ってるんだから!」
その時、目の端に見知った制服姿を見つけて、私は思わず吐きかけた反論の言葉を飲み込んでしまった。
「それは、こっちのセリフですっ!」
駅前で突如として始まった痴話喧嘩は、あっという間に野次馬を呼び寄せる。
「ミネタカはね、ここ最近ずっとスランプだったの。あなたはその事、知ってたかしら? 私はそれを知っていたし、解ってもいたわ」
勝ち誇ったように言う彼女の指摘通り、彼のスランプに私は気付いてもいなかった。でも、だからといって、私に何ができただろう。
「私はね、彼がいち早くそこから脱出できるよう、環境も整えたし私の出来うる限りの協力もしたの」
スランプなんてそんなもの、乗り越えるのはあくまでも当人だし、まして端の雑音に振り回されるのを嫌う彼なら、そんなお節介は要らなかったはず。
「なのにミネタカったら、うるさい、うっとおしい、私じゃなくてあなたの方が自分を理解してるって言ったのよ」
彼女の憔悴しきった言葉と様子に、私は思わず、やっぱりな、と失笑してしまった。
「何が可笑しいのよっ! そうやって知らないふりして、本当は二人でこそこそ私の事を笑ってるんでしょっ!」
彼女が声を荒げるたびに、人垣もどんどん増えていく。
「あんたがミネタカを誑かしたんでしょっ!? 私はね、ミネタカの事なら何だって解ってるんだから!」
その時、目の端に見知った制服姿を見つけて、私は思わず吐きかけた反論の言葉を飲み込んでしまった。