限定なひと
「そうだったん、……あれ? でも、その人なら清住じゃなくて菅田さんて苗字だけど」
うん、そう。と、彼は尚もニヤニヤしながら答える。
「あの頃、オヤジとお袋、別居中でね。まぁ、こんな苗字だし。分かる人なら分かっちゃうから、旧姓使ってたんじゃないかな」
あの菅田さんが、そんな事になっていたとは全然知らなかった。というか、子供、しかも小学校高学年の子がいたこと自体、信じがたい。それくらい、菅田さんは若くて綺麗で、生活感を匂わせない人だった。
「オヤジは所謂、世間知らずの金持ち跡取りボンボンで、会社の事も家の中のゴタゴタもぜーんぶお袋任せ。まぁ、お袋は元々大学では経済が専攻だったし、俺の爺さん、当時の社長の専属秘書だった人だから、その辺は卒なくやってたみたいだよ」
悠然と筆を滑らせる菅田さんが実は辣腕経営者だったなんて、なんだかやっぱり想像がつかない。
「でも肝心のオヤジは、やれ新規参入だやれメセナだって、周りから言われるままに金をばらまきまくって、挙句に会社を傾かせて、お袋に助けてって泣きついて。お袋的にはまぁ、何とかできる範囲の事だったらしいんだけど、ここで手を貸したらあの人はずっとこのままだって、自分の実家に俺と二人で帰ってきちゃってさ」
「……は、はぁ」
なかなか、彼もハードモードな人生を送っていたらしい。
うん、そう。と、彼は尚もニヤニヤしながら答える。
「あの頃、オヤジとお袋、別居中でね。まぁ、こんな苗字だし。分かる人なら分かっちゃうから、旧姓使ってたんじゃないかな」
あの菅田さんが、そんな事になっていたとは全然知らなかった。というか、子供、しかも小学校高学年の子がいたこと自体、信じがたい。それくらい、菅田さんは若くて綺麗で、生活感を匂わせない人だった。
「オヤジは所謂、世間知らずの金持ち跡取りボンボンで、会社の事も家の中のゴタゴタもぜーんぶお袋任せ。まぁ、お袋は元々大学では経済が専攻だったし、俺の爺さん、当時の社長の専属秘書だった人だから、その辺は卒なくやってたみたいだよ」
悠然と筆を滑らせる菅田さんが実は辣腕経営者だったなんて、なんだかやっぱり想像がつかない。
「でも肝心のオヤジは、やれ新規参入だやれメセナだって、周りから言われるままに金をばらまきまくって、挙句に会社を傾かせて、お袋に助けてって泣きついて。お袋的にはまぁ、何とかできる範囲の事だったらしいんだけど、ここで手を貸したらあの人はずっとこのままだって、自分の実家に俺と二人で帰ってきちゃってさ」
「……は、はぁ」
なかなか、彼もハードモードな人生を送っていたらしい。