限定なひと
「俺の中学受験を機に家には戻ったんだけどね。結局、二年間だったかな」
困惑する私に、彼はわざとらしいほどの笑顔でにっと笑った。
「……ねぇ、待って。じゃあ、涼子さんは、何処から私の情報を得てるの?」
うーん、と口に手を当てたまま、彼が唸る。まるで、言うべきか言わざるべきかで苦悩しているように。
「たぶん……、美智留さんのお母さんじゃないかな」
「は?」
彼は、おずおずと視線をこちらに合わせた。
「お袋曰くね。美智留さんのお母さんから、毎年お歳暮と美智留さんの近況報告を兼ねた年賀状が届いてるんだって、あのおばさんが言ってたと」
「ああ、もうっ。母さんったら何を勝手にやってるのよっ!」
彼が苦笑しながら、憤る私の肩をそっと抱き寄せた。
「まぁ、あのおばさんもそれに甘んじてるって事は、渡りに船だと思ってるんじゃないの」
え? と彼を見ると、悪戯めいた笑みで私を覗き込む。
「また、おっさんと縁りなんて戻されたら、たまったもんじゃないでしょ? そうなる前に先手打てるように、貴女が何処にいて何をしてるのかくらいは押さえておきたいんじゃないの?」
そういう、ものなのだろうか。
「まぁ、可能性の話だけど。あのおっさんも隙あらばと思っているのかもしれないし、だからこそ、あの人もそうしてるんだろうし」
だとしても。
「冗談じゃない、そんなの。私の中では、もうとっくに終わってることだし」
ホントに? と彼が私に耳元で囁く。いつものとろりとした艶を含んだものとは違う、少しだけ不安そうな声で。なのに、なぜか私の心臓はばくばくと大きく脈打ちだす。
とにかく彼の目を見つめながら、当たり前でしょと一言いうので精一杯だった。
困惑する私に、彼はわざとらしいほどの笑顔でにっと笑った。
「……ねぇ、待って。じゃあ、涼子さんは、何処から私の情報を得てるの?」
うーん、と口に手を当てたまま、彼が唸る。まるで、言うべきか言わざるべきかで苦悩しているように。
「たぶん……、美智留さんのお母さんじゃないかな」
「は?」
彼は、おずおずと視線をこちらに合わせた。
「お袋曰くね。美智留さんのお母さんから、毎年お歳暮と美智留さんの近況報告を兼ねた年賀状が届いてるんだって、あのおばさんが言ってたと」
「ああ、もうっ。母さんったら何を勝手にやってるのよっ!」
彼が苦笑しながら、憤る私の肩をそっと抱き寄せた。
「まぁ、あのおばさんもそれに甘んじてるって事は、渡りに船だと思ってるんじゃないの」
え? と彼を見ると、悪戯めいた笑みで私を覗き込む。
「また、おっさんと縁りなんて戻されたら、たまったもんじゃないでしょ? そうなる前に先手打てるように、貴女が何処にいて何をしてるのかくらいは押さえておきたいんじゃないの?」
そういう、ものなのだろうか。
「まぁ、可能性の話だけど。あのおっさんも隙あらばと思っているのかもしれないし、だからこそ、あの人もそうしてるんだろうし」
だとしても。
「冗談じゃない、そんなの。私の中では、もうとっくに終わってることだし」
ホントに? と彼が私に耳元で囁く。いつものとろりとした艶を含んだものとは違う、少しだけ不安そうな声で。なのに、なぜか私の心臓はばくばくと大きく脈打ちだす。
とにかく彼の目を見つめながら、当たり前でしょと一言いうので精一杯だった。