限定なひと
「今の仕事を続けるのも充分アリだとは思う。それは美智留さん次第。ただ、あの仕事はいくらでも替えが効く。ぶっちゃけ、美智留さんじゃなくてもいいんだよね。でもさ、あの書を綴れるのは、この世で美智留さんだけなんだよ」
すごく、すごく困る。
「……あの、すみません。なんか、さっきのプロポーズよりも、嬉しそうなんですけど?」
図星過ぎてあわあわと慌てると、彼が、大げさにため息を吐いた。
「まぁ、いいよ。どっちにしろ、俺の秘めたる想いはさ、甘くてクールな飴の味とむせるくらいの墨の匂いとでセットになっちゃってるし」
そう言うと彼は、例の意地悪な笑みを浮かべる。
「今は、ほんのり甘くて可愛い美智留さんを堪能させてもらってるけど、そのうち、ぐっしょり墨の匂い漂わせた、物凄くアンニュイな美智留さんも抱けるのかと思うとゾクゾクする」
驚いて目を見開くと、彼は更に艶っぽい意地悪顔でニヤリとしたり嗤った。
「あの後、俺、すぐに稽古場に入ったんだけど。とにかく、墨と合いまった妙に濃ゆい匂いが気になって、つい、おっさんに聞いたんだよね」
彼は手の中の眼鏡をくるくると回しながら、飄々と話を続ける。
「そうしたら、あのおっさん。キミみたいな子供には理解する必要がない、って言うから、むっと来てさ。何だか知らないけど女の子をあんなに辛そうにさせるのは良くない、って言い返したら、眼鏡トントンはじめやがって」
その光景が想像に難くなくて、思わず顔が引きつる。
すごく、すごく困る。
「……あの、すみません。なんか、さっきのプロポーズよりも、嬉しそうなんですけど?」
図星過ぎてあわあわと慌てると、彼が、大げさにため息を吐いた。
「まぁ、いいよ。どっちにしろ、俺の秘めたる想いはさ、甘くてクールな飴の味とむせるくらいの墨の匂いとでセットになっちゃってるし」
そう言うと彼は、例の意地悪な笑みを浮かべる。
「今は、ほんのり甘くて可愛い美智留さんを堪能させてもらってるけど、そのうち、ぐっしょり墨の匂い漂わせた、物凄くアンニュイな美智留さんも抱けるのかと思うとゾクゾクする」
驚いて目を見開くと、彼は更に艶っぽい意地悪顔でニヤリとしたり嗤った。
「あの後、俺、すぐに稽古場に入ったんだけど。とにかく、墨と合いまった妙に濃ゆい匂いが気になって、つい、おっさんに聞いたんだよね」
彼は手の中の眼鏡をくるくると回しながら、飄々と話を続ける。
「そうしたら、あのおっさん。キミみたいな子供には理解する必要がない、って言うから、むっと来てさ。何だか知らないけど女の子をあんなに辛そうにさせるのは良くない、って言い返したら、眼鏡トントンはじめやがって」
その光景が想像に難くなくて、思わず顔が引きつる。