限定なひと
「餓鬼には関係ない。少なくとも、女酔わせて抱きつぶせるくらいの一端の大人にならなきゃ、お話にもならないよ、とか言いやがるからさ」
え?
「ああそうですか、わかりましたって言って、その日の稽古はもう勝手に切り上げて終わりにしたんだけど」
「ねぇ、ちょっとまって。だからあの晩、……私と、したの?」
まさかー、と彼が笑いながら頭を左右にふると、眼鏡のテンプルを丁寧に起こした。
「それは違うよ、誓ってもいい。実際大人になってみて、そういう行為は最低だって事くらいは十分分かってます」
限定眼鏡の彼が、ぐいと私を抱き寄せてきて。
「そうじゃなくて。あの晩はさ、ああ、あの時のあの綺麗なお姉さんは、こんなにも楽しく笑えるようになってたんだ、こんなにも素敵になってたんだ。もう、この人はお姉さんなんかじゃない。自分と対等な一人の女性なんだ、って思ったらさ」
唇に軽くキスを落としていく。
「嬉しすぎて、堪らなくなった。それだけ」
そう言うと、そのまま彼は私ごとベッドに倒れ込み、すでに全身が切なくなくなってしまった私を愛おしげに食んでいく。
「俺、ホントに心配してたんですよ? 社内のヤツらに美智留さんが奪われないかって。その辺も分かってます?」
「あ……、んっ。わかんないよ、そんなのっ」
こんな声出すのも、俺の前だけにしてくださいね、とか、そっちこそ吐息紛れの色っぽい声で一々言わないでほしい。
恥ずかしくてはずかしくてたまらないから、私はつい、彼の目元から限定眼鏡を取り上げていた。
え?
「ああそうですか、わかりましたって言って、その日の稽古はもう勝手に切り上げて終わりにしたんだけど」
「ねぇ、ちょっとまって。だからあの晩、……私と、したの?」
まさかー、と彼が笑いながら頭を左右にふると、眼鏡のテンプルを丁寧に起こした。
「それは違うよ、誓ってもいい。実際大人になってみて、そういう行為は最低だって事くらいは十分分かってます」
限定眼鏡の彼が、ぐいと私を抱き寄せてきて。
「そうじゃなくて。あの晩はさ、ああ、あの時のあの綺麗なお姉さんは、こんなにも楽しく笑えるようになってたんだ、こんなにも素敵になってたんだ。もう、この人はお姉さんなんかじゃない。自分と対等な一人の女性なんだ、って思ったらさ」
唇に軽くキスを落としていく。
「嬉しすぎて、堪らなくなった。それだけ」
そう言うと、そのまま彼は私ごとベッドに倒れ込み、すでに全身が切なくなくなってしまった私を愛おしげに食んでいく。
「俺、ホントに心配してたんですよ? 社内のヤツらに美智留さんが奪われないかって。その辺も分かってます?」
「あ……、んっ。わかんないよ、そんなのっ」
こんな声出すのも、俺の前だけにしてくださいね、とか、そっちこそ吐息紛れの色っぽい声で一々言わないでほしい。
恥ずかしくてはずかしくてたまらないから、私はつい、彼の目元から限定眼鏡を取り上げていた。