限定なひと
「……もしかして、これって美智留さんの?」
「ああ、それねっ! そうなの。可愛いでしょ? 桜香女学院高等科の制服」
 嬉々として答える母親と俺のやり取りに、彼女がしまったとばかりに顔をゆがめる。
「今でも人気なのよ、桜香は。特にこの制服が人気でね、……まぁ、この子は桜香の制服に憧れてって訳でもなかったみたいだけど」
 彼女がにわかに無表情になった。なんか別のモードに切り替わったみたいだ。俺の頭の中もますますざわつく。
 俺たち二人の間に流れる妙な空気とは裏腹に、彼女の母親が一人、ベラベラと無駄話に花を咲かせていた。
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