限定なひと
「じゃあ、俺も後でそうする。あとは?」
彼女が、ぽつりぽつりと昔をなぞりだす。
「縛られない時は、彼の前で、……自分で」
「自分で? 何?」
聞き返すと、彼女が横を向いて唇を噛んだ。
……すん。
僅かに鼻のすする音がした。
「美智留さん?」
見る間に彼女の瞳から、涙が膨れ上がっては零れ落ちる。
「……う、ふぅっ」
堪え切れない嗚咽が僅かに漏れた。俺は慌てて彼女を抱きしめる。
「ごめん、美智留さん。別に昔の事、責めるつもりはないからね。それも含めて今の美智留さんなんだから。たださ、俺、最低だから、二人の間で何があったのか、知りたいって気持ちがある。たぶん、これって、しょうもない嫉妬」
俺の方をようやく見てくれた。涙でぐちゃぐちゃの顰め面をして。
「でもね、美智留さん。嫌だったら嫌って大声で言って。殴っても構わないよ。我慢する必要ないから。そんでもって、人でなし、大嫌いって泣いて喚いていいからっ、ね?」
でも、すぐに視線は外されて、途切れ途切れでめちゃくちゃな事を言う。
「あ、あげたら、だめ、なの、ぅっく、こ、こえ、きこえたら、だめだって、ぇっ、だからっ」
咄嗟に、頭をぶん殴られたような衝撃に見舞われた。それと同時に、行き場の無い怒りと、自分の浅はかさに気づいて、俺は彼女を更に掻き抱く。腕の中の躰がびくりと強張るのを感じて、我に返った。
落ち着け。大きく一つ、深呼吸をした。
彼女が、ぽつりぽつりと昔をなぞりだす。
「縛られない時は、彼の前で、……自分で」
「自分で? 何?」
聞き返すと、彼女が横を向いて唇を噛んだ。
……すん。
僅かに鼻のすする音がした。
「美智留さん?」
見る間に彼女の瞳から、涙が膨れ上がっては零れ落ちる。
「……う、ふぅっ」
堪え切れない嗚咽が僅かに漏れた。俺は慌てて彼女を抱きしめる。
「ごめん、美智留さん。別に昔の事、責めるつもりはないからね。それも含めて今の美智留さんなんだから。たださ、俺、最低だから、二人の間で何があったのか、知りたいって気持ちがある。たぶん、これって、しょうもない嫉妬」
俺の方をようやく見てくれた。涙でぐちゃぐちゃの顰め面をして。
「でもね、美智留さん。嫌だったら嫌って大声で言って。殴っても構わないよ。我慢する必要ないから。そんでもって、人でなし、大嫌いって泣いて喚いていいからっ、ね?」
でも、すぐに視線は外されて、途切れ途切れでめちゃくちゃな事を言う。
「あ、あげたら、だめ、なの、ぅっく、こ、こえ、きこえたら、だめだって、ぇっ、だからっ」
咄嗟に、頭をぶん殴られたような衝撃に見舞われた。それと同時に、行き場の無い怒りと、自分の浅はかさに気づいて、俺は彼女を更に掻き抱く。腕の中の躰がびくりと強張るのを感じて、我に返った。
落ち着け。大きく一つ、深呼吸をした。