限定なひと
「ヒートアップしすぎて痛くしたら、ごめん。その時ははっきり嫌って言うんだよ、いい?」
 うん、と小さく掠れた声がした。彼女の瞳に、見る間に涙が溜まり出す。唇で何度もそれを拭いながら、ジーンズのジッパーをおろす。奇妙な解放感に煽られつつ、俺は彼女の躰を仰向けから裏返す。俺のしたいことを察したのか、彼女はベッドに膝をついた。
 あのおっさんが好きな体位、だそうだ。でも、俺はこの体位がぶっちゃけ嫌いだ。彼女とくっついていたいし彼女の全てを見逃したくない俺にとって、表情も何も見えない必要最低限の接触のみという、ただ肉欲を貪るだけのようなやり方がすごく馬鹿っぽくてやだ。
 今後一生、彼女から強請ってこない限り、この体位は絶対やらない。
 じっとりと温みを帯びた蜜口にそれを宛がうと、彼女の躰がひくりと戦慄く。
「大好きだよ、チルさん」
 俺は彼女の耳元でわざとそう言うと、一気に彼女を貫いた。
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