サヨナラから始まる恋
「ごめん、なんだか私も、よくわからなくなっちゃった」

「あーもう! 千夏は話逸らすから! 余計混乱する!」

話逸らしてない……と思ったけど口に出さず。

時間のことを言ったのが悪かったのか。


「千夏、」


私の手をぎゅっと握った龍樹くんは、可哀想になるくらい悲しそうな瞳で私に囁いた。

思わず、大丈夫? と聞いてしまいそうなくらい、捨てられた子犬のように、小さく可哀想に見えた。



「ね、俺は千夏以外、考えられない。付き合うのも、結婚も何もかも。

そして千夏の隣に俺以外が……とか、千夏に俺以外が触れるとか……絶対に無理だし。

俺の隣に千夏以外が、もさ、俺の中で余計にありえないし……考えたくもない。気分が悪くなる。

お願いだから、別れるとか……言うな」


なに、もう、どういうこと……

全然わからないよ。


意味わかんない、こんな人。

今更、なに。口ばっかり。ばか! と言って、手を振り払って 会議室飛び出して……それから それから……

そう思うのに

「泣かないで……千夏。本当にごめん」

涙が溢れていることに気づいたのは、龍樹くんが愛しそうな瞳で私を見つめながら、頰に伝う涙を拭いたから。


「たつ、きくん……」


わたし
龍樹くんのことが好きなの。

でも龍樹くんは……




龍樹くんは……?

わたし、龍樹くんの気持ちちゃんと聞けばよかった。

この瞳が、目がわたしを好きと言ってるくらいの人が、わたしを好きじゃないなんて考えられないのに……。
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