サヨナラから始まる恋
「よかった。けど、本当に疲れた。俺 ほとんど寝てない……。土日返上で働いた分本当は今日明日と代休なんだ……今日会社に来たのは 千夏に会うためだけ……。

ゆっくりホテルチェックアウトして、ゆっくり新幹線乗るつもりだったのに、千夏のおかげで始発だよ……」

恨めしそうな声を出す彼にぎくりと肩が上がった。

「既読つかない電話も繋がらない。始発で帰るしかない」

「ごめんなさい……」

「俺が出張だったってことも忘れてたみたいだし。千夏の愛の方が、足りなくねぇ?」

「そんなっ大好きだよ! 大好きすぎて辛かったの……!」


言った後に『あ』っと思った。

ニヤリと笑う彼にわたしは硬直。


悪そうな顔してても、なんでそんなにかっこいいんだろう。


「もうこれからは、勝手に別れるとかナシな? 嫌なことは嫌って言って欲しいし、なおしてほしいところは言って欲しい。それで嫌いになるとかないし、それで嫌われることのほうが嫌だから。

あと こんな思い二度としたくないから」


龍樹くんはわたしのことが好きなんだから わたしからの別れ話……どんな気持ちで見たんだろう。

そう思うと申し訳なさよりも悲しさのほうが勝った。


「うん これからはなんでも言うから。……傷つけてしまって、ごめんなさい」

そういうと、龍樹くんは小さく、少し困ったような笑顔。

「俺が傷ついたことなんて本当はどうでもいいんだ。ずっと幸せだと思っていたのに、千夏がいつも傷ついていたことに気づけなかったことが俺は一番辛い」

彼のことが大好きだと世界中の人に叫びたい。

そんな気持ちになった。

本当はこんなにも深い愛でわたしのことを愛してくれていたんだね……。
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