サヨナラから始まる恋
龍樹くんのことを全てわかってるわけではないが、恐らく彼は結婚願望がそもそもあまりない。

前、龍樹くんの実家に遊びに行った。

普通……少なくとも私は、彼氏の実家に行くってなったら、結婚の挨拶? なんて思ったりするわけで。

いざ行ってみてわかったけど、結婚の挨拶ではなくて、普通にゆるっとした感じで。

『付き合ってる人』と紹介された。ゆるゆると。

確かに何も言われてないのにそんなかしこまって紹介されてもびっくりするけど、結婚の挨拶かと勘違いして、彼氏親ウケのいい服装調べて、それに沿って服を新調までしちゃった自分が滑稽過ぎた。

でもよくよく考えたら、プロポーズされたことがないどころか、結婚匂わされたこともなかった。

……ということに気づいた時は、流石に自分が情けなさ過ぎて笑った。


龍樹くんは、そうやって期待をすり抜けて行く人。

決して私の期待には応えてくれない人。


しょうがない。

私が言わないんだから。

というか、私が期待し過ぎてただけ。

< 6 / 35 >

この作品をシェア

pagetop