むらさき

晩ご飯のあと、ぼくとトモロウだけが、それぞれの担当の先生に呼び出された。

それで、技術についての補習授業を受ける。


海からもたらされる物、技術。

小さい物は、コンピュータのチップやらカイロやらコンデンサやら、なんかそういうややこしい部品みたいなものから、大きい物は、あのチンボツセンみたいな完成された物まで。

人に便利を与えてくれる物。

新しい技術は日々海の中で生まれ続け、そして人に、さらなる便利をもたらしてくれる。

それらを人のもとへ届ける担い手が、海の子。

その責任は重大で、とても、とても、大事な仕事。


ダイチャン先生は補習室のコクバンにチョークでそんな風なことを書きながら、くどくどと相変わらずオカマさんみたいなしゃべり方でぼくに言い聞かせる。

こんな話し、もう何度も聞いた。

基本から教えられたところで、それを探すのは自分だ。

浅瀬にあるような小物は女子のためにとっておかないといけないし、かといって沖じゃ、中物・大物はあったとしても、潜るのが大変なんだ。

ジグソーパズルが得意な人とそうでない人がいるように、技術漁りにだって向き不向きがあるんだぞ。

ぼくは黙って聞いていたけど、心の中では先生に向かって舌を付きだしていた。

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