むらさき
「タヌキみてえ!」
「なんだよ!」
ぼくはせいいっぱい強がって胸を張った。
ぼくとおんなじようにパンツ一丁のタケシは、
「カガミ見てみろ~!タヌキユウスケ~!」
逃げるように海に向かって浜を駆けていった。
「だから、なんなんだよ!」
だからぼくも走ってそれを追った。
ざばんざばんと浅瀬の海水を蹴散らしてタケシを追う。
──と。
「ひゃっ!」
「わっ!」
遠くにいるタケシばかり見ていて、しゃがんで水中をのぞき込んでいたそいつの背中に、左足のふくらはぎが当たってしまった。
それで、そいつはそのまま前のめりに倒れて、ばっしゃ~んと水柱を作ってみせた。
「わ、わ!ごめんミシマ。大丈夫?」
ぼくはタケシを追っていた足を急いでとめて、いま蹴っ飛ばしてしまったミシマの様子をうかがった。
──ぶくぶくぶく──。
ミシマは浅瀬の海底にうつぶせで顔をうずめたまま動かない。
「み、ミシマっ!?」
呼びかけても反応がないミシマ。
「ちょっと!大丈夫かミシマ!」
ぼくはあわてて近くまでばしゃばしゃと海水を踏みしめて駆け寄った。
そしてミシマを抱きかかえようとした、まさにそのとき。