むらさき
「なに笑ってんだよ!」
ぼくはまた、せいいっぱい胸を張って強がった。
「だって、セダくん、そのカオっ!」
「え?」
言われて、さっきのタケシを思い出した。
「あ~!タケシのヤツ!ぼくのカオになにかしたな!」
地団駄を踏むようにばしゃばしゃと海水を踏みしめるぼくを見て、ミシマはまた声を出して笑う。
「コテラくんのしわざなのね?ちょっと待って。さっき拾った技術に、カガミがあったから」
言うと、ミシマは腰に巻いたポットから海水に濡れた丸いテカガミを取り出して、ぼくに渡してくれた。
そして、ぼくは自分のカオをカガミに映す。
「なんだこりゃ~!」
思わず叫んでしまった。
──そうか~。さっきの手に持ってたスプレー缶はそういうことか~!
ぼくのカオは、おでこから鼻にかけて、真っ黒に染められてしまっていたのだ。
ミシマはぼくの様子を見て、また笑った。
「せっかくの中物も、使っちゃったら貢《みつ》ぎにならないじゃない。ねえ?」
「アイツがそんなの考えて技術漁《アサ》りをするもんか」
カガミをミシマに返して、ぼくは逃げていったタケシを探した。
すると、ここよりもうちょっと深いところで、今度はガジに向かってスプレーを吹きかけているタケシの姿を捉えた。