むらさき
「あ~!コテラくん、またミタライくんをいじめてる!」
同じようにタケシを発見したらしいミシマはほっぺたをふくらませて、ワンピースの水着のスカートみたいにひらひらが付いたところの前の方を両の手で掴んで叫んだ。
「こらしめてきてやるから!」
ぼくが言いつつ沖へ踏み出そうとしたとき、
「わたしも行く!」
ガチャとテカガミをしまったミシマもおんなじようにぼくに並んだ。
並んで走ると、わきの下あたりまで伸ばしているミシマの髪の毛がぼくの腕にふれる。
ぼくはやっぱりドキドキをミシマに気づかれないよう、少し遠くに見えるタケシのことだけを考えて、左隣の彼女のことは見ないことにした。
そこからふたりでタケシを捕まえて制裁を加える。
浜までキョウセイ連行。
ぼくがタケシを押さえ込んで、ミシマがスプレーの残りぜーんぶ使ってタケシの体じゅうに落書きをした。
あとをついてきたガジはそのあいだ、ずうっとおどおどした調子でぼくらを見ていた。
こうやって性根が優しいから、ガジはタケシやトモロウにすぐいじめられるんだ。
こうして、ぼく、ガジ、それからタケシで、顔面タヌキトリオができあがった。
ミシマは並んで立つぼくらを見て、またしばらくのあいだ、大きな声を出して笑った。