臆病な背中で恋をした ~2
2-3
「日下室長、お帰りなさーいっっ!」
会社の最寄駅近く、建ち並ぶ飲食店街の一画にあるお手頃な居酒屋で。初野さんは、はつらつとジョッキを掲げ、気持ちよさそうにビールを喉に流し込んだ。
週明けの月曜なのにも関わらず、『飲みに行こっ』と有無を言わせず引き摺って来られた理由は。来週から日下室長が復職すると正式に社内通達があったから。
「あ~これでやっと毎日が潤うわぁっ。会えるかもってご褒美でもなきゃ、やってらんないわよー!」
「・・・良かったですね」
カシスオレンジを一口。わたしは小さく笑って見せる。
「手塚さんはターミネーターがいるからいーのよ。あたしは死活問題だったんだからさー、マジメに室長不足で!」
思い切り力説されてしまった。
「で、津田さんとは上手くいってんの?」
「えぇと、まあ」
いきなり向けられた水を曖昧に濁して。
亮ちゃんが帰ってきて彼の役目も終わった。自然消滅したことにでもするしかないかな。内心で重たく溜め息を漏らす。
「室長、社内回って挨拶しないかなーっ。あーもう社長室の前で出待ちしたーい!」
初野さんが楽しそうに浮かれているのを、わたしはガラス一枚隔てて見ていた。
笑い返している自分を、別の自分がぼんやり眺めているみたいに。
なんだかもう。生きてるって現実味も・・・曖昧だった。
会社の最寄駅近く、建ち並ぶ飲食店街の一画にあるお手頃な居酒屋で。初野さんは、はつらつとジョッキを掲げ、気持ちよさそうにビールを喉に流し込んだ。
週明けの月曜なのにも関わらず、『飲みに行こっ』と有無を言わせず引き摺って来られた理由は。来週から日下室長が復職すると正式に社内通達があったから。
「あ~これでやっと毎日が潤うわぁっ。会えるかもってご褒美でもなきゃ、やってらんないわよー!」
「・・・良かったですね」
カシスオレンジを一口。わたしは小さく笑って見せる。
「手塚さんはターミネーターがいるからいーのよ。あたしは死活問題だったんだからさー、マジメに室長不足で!」
思い切り力説されてしまった。
「で、津田さんとは上手くいってんの?」
「えぇと、まあ」
いきなり向けられた水を曖昧に濁して。
亮ちゃんが帰ってきて彼の役目も終わった。自然消滅したことにでもするしかないかな。内心で重たく溜め息を漏らす。
「室長、社内回って挨拶しないかなーっ。あーもう社長室の前で出待ちしたーい!」
初野さんが楽しそうに浮かれているのを、わたしはガラス一枚隔てて見ていた。
笑い返している自分を、別の自分がぼんやり眺めているみたいに。
なんだかもう。生きてるって現実味も・・・曖昧だった。