臆病な背中で恋をした ~2
「ま・・・元の飼い主がどうしてもって頼むなら返してやるさ。しばらくは面倒見てやるから、黙って俺の言うこと聞いとけ」

「津田さん・・・」

億劫そうに。素っ気なく言われてるのに胸の中がじんと温かくなって・・・涙が滲んだ。優しくはないけど、やさしい。やっぱりそういう人だなぁって思った。

亮ちゃんの意思がもう固いことを知った上で、婚約者まで紹介されるわたしを憐れに思って同情してくれたのかも知れない。それでわざとあんな風に・・・。それより亮ちゃんとの信頼関係にひびが入ったんじゃないかと、はっとして。

「あのっ、亮ちゃんとケンカになっちゃったんじゃ・・・?!」

思わずハンドルを握っていない津田さんの左腕を掴んでいた。

「仕事に私情を持ち込むほどバカじゃないからな、お互いに。別に気にしなくていい」

「よかった・・・・・・」

安堵の溜め息を漏らすと、物言いたげな横目を向けられる。

「・・・あんたは納得できたのか」


そう訊かれたけど、まだ気持ちはバラバラに散らばっていて。
どう答えていいのか・・・分からなかった。




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