臆病な背中で恋をした ~2
「・・・おい」

「ふわぁっ」

冷蔵庫の中の何かのこびりつきを一生懸命こすって落としてる最中、背中からいきなり低い声がして。慄きながら変な悲鳴を上げた。

「こっちが驚くだろうが」

振り仰げばワイシャツにネクタイ姿の津田さんが、不機嫌そうな顔でわたしを見下ろしている。

「あ・・・お疲れさまです」

「今夜、空いてるか?」

「はい。特には無いです、けど」

前置きや説明が無いのもいつものこと。視線を傾げて窺っても、読み取れない。

「なら6時半に外で待ってろ」

返事をする前に、踵を返した背中は消えていた。
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