臆病な背中で恋をした ~2
そう言えば。わたしがここにいるの、どうして分かったんだろう? わざわざマネージメント課に寄って、所在を確かめるのは有り得ないだろうし。
何でも見透してるみたいで忍者みたいな人だぁと思いながら。終業時間まで頑張って、一人でどうにか大掃除を終えたのだった。




「今日は肉体労働で疲れたねー」

ロッカールームで着替えながら初野さんがぼやく。

「ま、明日は午前中で仕事納めだし、勘弁してやるかー」

年末のお休みは、明後日の28日から年明けの6日の日曜まで。
仕事納めは自分の机の上の整理をしたり、重要な書類を鍵付きの棚に保管したりしして、ひととおり済んだら各課で一年の反省会的な事をする。特に不動産事業部で総括の締めみたいなものは無く、課の全員で最後に『お疲れさまでした』の斉唱と手締めで終了だ。去年もお昼前には退社した記憶がある。

「明日、お昼どっかで食べて帰らない?」

初野さんの提案に笑顔で了承。

「だって、これからデートでしょ?」

彼女が顔を寄せてきてニンマリ笑うから、どうして分かったのかと目を丸くした。

「ゆっくり着替えてる時は、待ち合わせの時だってバレバレ!」


なんだか初野さんまで、くノ一に見えてきた・・・・・・。
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