臆病な背中で恋をした ~2
「・・・その、明里ももう子供じゃないし、親がいちいち口出しするつもりもないですよ。・・・津田さんに任せますから、二人のことは二人で決めたらいいと思うんでねぇ」

困り顔で笑うお父さんが、わたしの結婚をそんな風に考えていてくれたなんて、初めて知って。目頭が熱くなって涙栓が緩む。

「お父さん・・・・・・」

小さく鼻をすすり上げると、隣りの津田さんがハンカチを差し出してくれた。

「・・・すみません」

すると黙って、あやすみたいに頭の上に掌が乗せられる。
一瞬。亮ちゃんにされてる気がして。・・・・・・ぎゅっと切なくなって、借りたハンカチで目を押さえるフリをしてわざと顔を隠した。

「私は結婚を望んでいますが急いではいません。・・・付き合って一年も経ってませんし、何より彼女の気持ちを大事にしたいので」

津田さんが穏やかな口調でお父さんに話しているのが聴こえる。

「・・・忘れられない幼馴染がいたようで、明里の気持ちが固まるのを待ってやりたいと思っています」

その言葉に思わず顔を上げてしまっていた。
目を見開いて固まってるわたしに津田さんは。本当に演技なのかを誤ってしまいそうなくらい、やんわりと自然な笑みを浮かべたのだった。
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