臆病な背中で恋をした ~2
『しっかりした好い人でよかったなぁ』

お父さんは上機嫌でにこにこしながら、お母さんにも報告していた。
話の中で、津田さんが亮ちゃんより一つ歳上なのも、三人兄妹の長男なのも初めて知った。・・・そのくらい何も知らなかった。



10時近くになって帰って来たナオに、下でお父さんが話したんだろう。階段を駆け上がってくる足音とともに、ノックされたドアが勢いよく開け放たれ。部屋に入るなりコートも脱がないままで、大男がベッドに転がっていたわたしに飛びついた。

「ちょっ、重っ、ナオ~っっ」

「よかったなっ明里!」

髪をくしゃくしゃにされながら、ぎゅっとハグされる。

「これで俺も心置きなく結婚できる!」

「なによぉ、自分の心配ー?」

「ユカの心配は全然してねーけど、明里を結婚させられなかったらどうしようかって、本気で悩んだんだぞ、バーカっ」

やっと起き上がってわたしまで引っ張り上げたナオは、ニンマリ爽やかに笑って言う。

「・・・明里が亮ちゃんを好きだったのは知ってっけどな」

一呼吸おき真面目な表情で見つめられた。

「望みがないならきっぱり諦めろ。それで、明里を想ってくれてる津田さんを大事にしろ。愛されてる方が絶対、幸せになれんだからな?」

ちがうよナオ。喉元までそう出かかった。

亮ちゃんはわたしを愛してくれてた。
瑠衣子さんを紹介した時、亮ちゃんに迷いがなかった。
強い意思しか感じなかった。
目を見ればわかる。声を聴けばわかる。
愛してるから貫かせてくれって。
だから。わたしは・・・!
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