臆病な背中で恋をした ~2
「役・・・って、じゃあ」
瑠衣子さんとは恋人でも何でもなくて?
驚きを隠せないわたしに、亮ちゃんはおもむろに頷き返す。よかったぁ・・・・・・。全身から力が抜けていくくらい安堵の息を吐いた。
すごくお似合いで、二人ともオトナで。とても太刀打ちできないって、自分に言い聞かせて無理やり飲み込んで、それ以上は考えないようにしてた気がする。耐えられないって思った。亮ちゃんが自分以外のひとを愛する姿を、少しでも思い浮かべちゃったら。
「・・・彼女は結婚していて娘も一人いる。夫は社長の実の弟で、・・・義理の妹に当たる人だ」
わたしの頭に掌を置いて静かに言ったあと。体勢を戻した亮ちゃんはハンドルをゆっくりと切り、街の灯が浮かび上がる濃紺の景色の中をまた車を走らせ始めた。
瑠衣子さんと旦那さんも子供の頃からの幼馴染だったと、しばらくしてから亮ちゃんは口を開いた。
「・・・由弦(ゆづる)さんは彼女の従兄が継いだ組のナンバー2で、社長も可愛がって目をかけていた。だが2年前・・・結婚して三ヶ月で元組員に刺殺された。生まれて来る子供を抱くこともできずにだ・・・」
「・・・!」
思いもしなかった衝撃的な話に、わたしは言葉を失くして顔を歪めた。瑠衣子さんにそんな辛い過去があったなんて、微塵も感じさせない笑顔だった。とても大らかで優しそうで・・・!
まさか社長が弟さんを亡くしてたことだって何も知らなかった。最初からわたしを気にかけてくれたのは、瑠衣子さんを重ねて・・・?
心臓が痛い。悲しすぎて痛い。フロントガラスの向こうをじっと見据えてる亮ちゃんの眼差しが、少し遠い気がした。
「彼女は俺の頼みを何も言わずに引き受けてくれた」
失うことを知っている人・・・だから。
声に重みを感じて聴こえる。
「・・・・・・何が幸せかは明里に選ばせてやって欲しい、生きている今しか叶わない、・・・そう言っていた。明里を会わせた後に」
瑠衣子さんとは恋人でも何でもなくて?
驚きを隠せないわたしに、亮ちゃんはおもむろに頷き返す。よかったぁ・・・・・・。全身から力が抜けていくくらい安堵の息を吐いた。
すごくお似合いで、二人ともオトナで。とても太刀打ちできないって、自分に言い聞かせて無理やり飲み込んで、それ以上は考えないようにしてた気がする。耐えられないって思った。亮ちゃんが自分以外のひとを愛する姿を、少しでも思い浮かべちゃったら。
「・・・彼女は結婚していて娘も一人いる。夫は社長の実の弟で、・・・義理の妹に当たる人だ」
わたしの頭に掌を置いて静かに言ったあと。体勢を戻した亮ちゃんはハンドルをゆっくりと切り、街の灯が浮かび上がる濃紺の景色の中をまた車を走らせ始めた。
瑠衣子さんと旦那さんも子供の頃からの幼馴染だったと、しばらくしてから亮ちゃんは口を開いた。
「・・・由弦(ゆづる)さんは彼女の従兄が継いだ組のナンバー2で、社長も可愛がって目をかけていた。だが2年前・・・結婚して三ヶ月で元組員に刺殺された。生まれて来る子供を抱くこともできずにだ・・・」
「・・・!」
思いもしなかった衝撃的な話に、わたしは言葉を失くして顔を歪めた。瑠衣子さんにそんな辛い過去があったなんて、微塵も感じさせない笑顔だった。とても大らかで優しそうで・・・!
まさか社長が弟さんを亡くしてたことだって何も知らなかった。最初からわたしを気にかけてくれたのは、瑠衣子さんを重ねて・・・?
心臓が痛い。悲しすぎて痛い。フロントガラスの向こうをじっと見据えてる亮ちゃんの眼差しが、少し遠い気がした。
「彼女は俺の頼みを何も言わずに引き受けてくれた」
失うことを知っている人・・・だから。
声に重みを感じて聴こえる。
「・・・・・・何が幸せかは明里に選ばせてやって欲しい、生きている今しか叶わない、・・・そう言っていた。明里を会わせた後に」