臆病な背中で恋をした ~2
亮ちゃんは束の間、黙って瞑目した。目を開けてもう一度わたしを見つめた眼差しは。見通せなかったけど強くて厳しい光を宿して見えた。

「ここからは二度と引き返せなくなるぞ」

「・・・うん」

覚悟って本当はどうすること?
愛してる人の幸せのために、出来ることを曲げないこと。
勇気を奮い立たせて臆病にならないこと。・・・きっと。

「約束してくれ明里。何があっても俺の為に自分を犠牲にするな。俺を売ってでも自分が助かることだけを考えろ」

「・・・・・・・・・」

「明里・・・」

素直に頷かないから切れ長の眸が怒ってる。そんなこと多分ムリだし、嘘は吐けないもん・・・・・・。

「俺の寿命を縮めるのがそんなに好きか?」

冷気を放ちながら目を眇める亮ちゃんに気圧されて、無意識に躰を少しずつ仰け反らせるわたし。あっと思った時には、そのままソファに仰向けに倒されていて。顔の両脇には、どん、と男らしい腕が付かれた。
< 78 / 121 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop