臆病な背中で恋をした ~2
やがて、とある駅前に建つ大きなシティホテルの地下駐車場に車は吸い込まれた。

フロントは通らずにそのままエレベーターを使い、降りて1201とプレートが付けられた部屋のドアチャイムを津田さんが鳴らす。内側から扉が開くとスーツ姿の男の人が無言で、中に招いた。


「明里、よく来たな」

どっしりとした一人掛けのソファに脚を組み、妖艶な笑みと共に迎えてくれた真下社長。

足を踏み入れたら高級感溢れるリビングが広がっていて。ついこの間のスイートルームの記憶が蘇る。恐る恐る見渡せば。社長を囲むように7、8人のスーツを着た男性が立っていたり座ってたり。不動産事業部の統括部長とマーケティング課長の顔もあった。

気後れして脚が動かせないでいたら、亮ちゃんがわたしの方にやってきた。

「亮ちゃん・・・っ」

胸元に小さく飛び込むと髪を撫でて頭の天辺にキスを落としてくれる。

「心配いらない。・・・俺がいる」

少しぎこちなかったけど、やっとわたしは笑みを浮かべたのだった。
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