しあわせ食堂の異世界ご飯2
 翌日、お店の営業が終わってからアリアはエマに相談をする。
「え? お店を休みたい?」
「はい。どうしても大事な用があって……」
 料理を担当している自分がいなければお店を開けられないので、ひどく申し訳ない気持ちになる。ちょうどお店の定休日であればよかったのだけれど、そう都合よくはいかなかった。
「構わないよ、アリアちゃんは毎日一生懸命働いてくれているからね」
「エマさん……ありがとうございます」
 無事に許可をもらえて、ほっと胸をなでおろす。
 そして同時に、やはり自分がいないとき、料理を任せられる人が必要だなと思う。
(時間を作って、カミルにちゃんと教えていこう)
 そうすれば、アリアがいなくなったとしてもしあわせ食堂が潰れることはないだろう。

 それからの数日間は、しあわせ食堂の閉店後にお茶会へ持っていくお土産の試作品を作る毎日になった。
 卵や牛乳と睨めっこしながら、満足のいくものができるまで繰り返しお菓子を作る。
 相手は大国の王女なので、下手なものを持っていくわけにはいかない。
 アリアの調理がひと段落したところで、しあわせ食堂のドアが開いてシャルルが帰ってきた。
「ただいま帰りました!」
「おかえりなさい、シャルル」
「アリア、カミルとエマさんは?」
 シャルルは店内を見回し、ふたりのことを確認する。王女に関する話なので、聞かれるわけにはいかない。
「ふたりとも二階で休んでるから、大丈夫」
 聞かれる心配はないからと、アリアはさっそくシャルルに進捗を確認する。
「フォンクナー様によくしていただいたので、部屋は問題ありません。今後も継続して、アリアの部屋にしていいと許可もいただいています」
「よかった。ありがとう」
「はい!」
 これで王城の方は問題がなさそうだ。
 あとは、シャルルが当日アリアの身支度を行えばいい。初めてのことではないので、恐らく卒なくこなしてくれるだろう。
 というわけで、残りは手土産だけだ。
「持っていく手土産はどうですか?」
「うん、こっちも問題はなさそう」
 アリアもシャルルにバッチリであることを告げて、できあがった試作品を見せる。とても香ばしく、美味しそうな見た目にシャルルは表情を輝かせている。
「自信作よ。シャルルも後で味見をお願いね」
「はいっ!! 間違いなくアリアのお土産が一番ですね! 当日が楽しみです」
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