しあわせ食堂の異世界ご飯2
トワイライドに次ぐ大国の第三王女である、ローズマリー・ルーズベル。
セレスティーナと同い年の十七歳で、国同士も仲が良い。
おっとりとした水色の優しい瞳に、明るい桃色のストレートヘア。
レースのリボンとヘッドドレスに、プリンセスラインのピンクベージュのドレスはまるでお人形のようだ。
小国の第二王女である、シンシア・ファフティマ。
この世界のなかでも領土が狭く、人口の少ない国。けれど魔法に特化していて、シンシアも十五歳という若さだが魔法の腕は一流だ。
内巻きのボブにしている髪は、透き通るような白色をしている。けれどそれに反するように、ダークブルーの瞳はとても力強い。
先ほど彼女が告げたように、ドレスではなく魔法使いのドレスローブだ。白色を基調とした膝丈のフィッシュテールスカートのドレスローブと、長い杖を手にしている。
場の雰囲気に少し戸惑い気味の、小国の第二王女ジュリエッタ・アンディーク。
花嫁になれたらいいなと思いながらやってきた、十七歳の少女だ。
セピア色の髪はアップにし、花で作ったヘッドドレスを付けている。ドレスも花の装飾をあしらっているので、花が好きだということがよくわかる。
今は円形のテーブルに、アリアの右隣からローズマリー、セレスティーナ、シンシア、ジュリエッタの順番で座っている。
この場を仕切るのは、もちろんセレスティーナだ。
「やっと、リベルト陛下の妃候補全員で顔を合わせることができたわ。アリア様ってば、普段はどこにいらっしゃるの? 庭園にもいらっしゃらないし……」
頬に手を当てながら首を傾げるセレスティーナに、捜したと言われて少し焦る。まさかそんなことになっているとは、思わなかった。
「わたくしは部屋にいることが多かったので、お会いできなかったのだと思います」
「まあ、そうでしたの。部屋にばかりいるのは、退屈ではなくて?」
「侍女が話し相手になってくれますから、楽しいです」
「アリア様はそれでいいの? エストレーラから、何も言われないのかしら」
必死に言い訳をするが、セレスティーナは不思議そうにする。
侍女ばかりと話しているよりは、他国の王女やこの国の貴族と交流を持つべきだと思っているのだろう。
確かにセレスティーナの言うことは最もで、反論もできない。
けれど、リベルトとは個人的な繋がりを得ているので、これ以上アリアがするべきことはないし、勝手に動いてリベルトに迷惑をかけるわけにもいかないのだ。
なんて答えればいいだろうと悩むアリアに、ローズマリーが助け舟を出す。
「もう、セレスティーナったら。そんな風に言っては、アリア様が困ってしまいますわ。いいではないですか、何をしようと個人の自由ですもの」
「ローズマリー……。そうね、わたくしが何か言うべきことではないわね。アリア様、気分を害してしまったかしら?」
「いいえ。わたくしでしたら大丈夫です、セレスティーナ様。ローズマリー様にもお気遣いいただきまして、ありがとうございます」
これ以上話が進展しなかったことに、アリアはほっと安堵する。
(私が違う話題を出すべき……よね?)
場を和ませようと、アリアは「そうでした」と声に出す。
「わたくし、お菓子をお持ちさせていただいたのです」
「まあ。ありがとうございます、アリア様」
アリアはシャルルを呼び、お土産のお菓子を準備させる。
同時に、ローズマリー、シンシア、ジュリエッタも自分の侍女に声をかけてそれぞれお土産を用意させた。
ローズマリーが用意したのは、数種類のフルーツだ。
ブドウ、桃、林檎、オレンジなどで、侍女がその場で向いてそれぞれのお皿に盛りつけをしてくれる。
シンシアが用意したのは、綺麗なペンダントだ。
ファフティマで発掘できる鉱石で作られていて、お守りとして令嬢に人気があるのは他国でも有名になっている。
ジュリエッタが用意したのは、鉢植えだった。
白、黄色、ピンク、水色と、可愛らしい花が咲いている。スズランのようになっているのに、色の種類が豊富で見ていてとても楽しい。
(思ったより、食べ物のお土産の人は少ないんだ)
ローズマリーも、お菓子ではなくフルーツそのままだ。下手に料理をするより美味しいこともあるので、それもひとつの手だろう。
「彼女が用意するフルーツは、とても瑞々しくて美味しいのよ。特に、わたくしはパン生地で林檎を包んで焼いたお菓子が大好きなの」
セレスティーナが嬉しそうに告げて、盛り付けられたフルーツを見る。それから全員に視線を巡らせて、微笑んた。
「ありがとうございます、みな様。……あら、アリア様のそれはなんですの?」
初めて見るそれに、セレスティーナは少し怪訝な表情をする。
「お菓子です。今から仕上げをさせていただきたいのですが……火を使うことを、お許しいただけますか?」
「あら、まだ完成ではないのね。……いいわ、火を使う許可をします」
「ありがとうございます、セレスティーナ様」
アリアは自分を含め、五人分のお菓子をテーブルの上に置いて砂糖を振りかけた。
シャルルから受け取った火の魔道具をお菓子に向けると、魔道具から小さな炎が噴き出てお菓子の表面にかかる。
「まあ、表面が……!?」
今までこのような調理法を見たことはなかったのだろう。セレスティーナはもちろんのこと、全員が驚きと、お菓子からただよってくる香りに釘付けになっている。
表面に載った粗目の砂糖が焦げて、カリカリになった。
セレスティーナと同い年の十七歳で、国同士も仲が良い。
おっとりとした水色の優しい瞳に、明るい桃色のストレートヘア。
レースのリボンとヘッドドレスに、プリンセスラインのピンクベージュのドレスはまるでお人形のようだ。
小国の第二王女である、シンシア・ファフティマ。
この世界のなかでも領土が狭く、人口の少ない国。けれど魔法に特化していて、シンシアも十五歳という若さだが魔法の腕は一流だ。
内巻きのボブにしている髪は、透き通るような白色をしている。けれどそれに反するように、ダークブルーの瞳はとても力強い。
先ほど彼女が告げたように、ドレスではなく魔法使いのドレスローブだ。白色を基調とした膝丈のフィッシュテールスカートのドレスローブと、長い杖を手にしている。
場の雰囲気に少し戸惑い気味の、小国の第二王女ジュリエッタ・アンディーク。
花嫁になれたらいいなと思いながらやってきた、十七歳の少女だ。
セピア色の髪はアップにし、花で作ったヘッドドレスを付けている。ドレスも花の装飾をあしらっているので、花が好きだということがよくわかる。
今は円形のテーブルに、アリアの右隣からローズマリー、セレスティーナ、シンシア、ジュリエッタの順番で座っている。
この場を仕切るのは、もちろんセレスティーナだ。
「やっと、リベルト陛下の妃候補全員で顔を合わせることができたわ。アリア様ってば、普段はどこにいらっしゃるの? 庭園にもいらっしゃらないし……」
頬に手を当てながら首を傾げるセレスティーナに、捜したと言われて少し焦る。まさかそんなことになっているとは、思わなかった。
「わたくしは部屋にいることが多かったので、お会いできなかったのだと思います」
「まあ、そうでしたの。部屋にばかりいるのは、退屈ではなくて?」
「侍女が話し相手になってくれますから、楽しいです」
「アリア様はそれでいいの? エストレーラから、何も言われないのかしら」
必死に言い訳をするが、セレスティーナは不思議そうにする。
侍女ばかりと話しているよりは、他国の王女やこの国の貴族と交流を持つべきだと思っているのだろう。
確かにセレスティーナの言うことは最もで、反論もできない。
けれど、リベルトとは個人的な繋がりを得ているので、これ以上アリアがするべきことはないし、勝手に動いてリベルトに迷惑をかけるわけにもいかないのだ。
なんて答えればいいだろうと悩むアリアに、ローズマリーが助け舟を出す。
「もう、セレスティーナったら。そんな風に言っては、アリア様が困ってしまいますわ。いいではないですか、何をしようと個人の自由ですもの」
「ローズマリー……。そうね、わたくしが何か言うべきことではないわね。アリア様、気分を害してしまったかしら?」
「いいえ。わたくしでしたら大丈夫です、セレスティーナ様。ローズマリー様にもお気遣いいただきまして、ありがとうございます」
これ以上話が進展しなかったことに、アリアはほっと安堵する。
(私が違う話題を出すべき……よね?)
場を和ませようと、アリアは「そうでした」と声に出す。
「わたくし、お菓子をお持ちさせていただいたのです」
「まあ。ありがとうございます、アリア様」
アリアはシャルルを呼び、お土産のお菓子を準備させる。
同時に、ローズマリー、シンシア、ジュリエッタも自分の侍女に声をかけてそれぞれお土産を用意させた。
ローズマリーが用意したのは、数種類のフルーツだ。
ブドウ、桃、林檎、オレンジなどで、侍女がその場で向いてそれぞれのお皿に盛りつけをしてくれる。
シンシアが用意したのは、綺麗なペンダントだ。
ファフティマで発掘できる鉱石で作られていて、お守りとして令嬢に人気があるのは他国でも有名になっている。
ジュリエッタが用意したのは、鉢植えだった。
白、黄色、ピンク、水色と、可愛らしい花が咲いている。スズランのようになっているのに、色の種類が豊富で見ていてとても楽しい。
(思ったより、食べ物のお土産の人は少ないんだ)
ローズマリーも、お菓子ではなくフルーツそのままだ。下手に料理をするより美味しいこともあるので、それもひとつの手だろう。
「彼女が用意するフルーツは、とても瑞々しくて美味しいのよ。特に、わたくしはパン生地で林檎を包んで焼いたお菓子が大好きなの」
セレスティーナが嬉しそうに告げて、盛り付けられたフルーツを見る。それから全員に視線を巡らせて、微笑んた。
「ありがとうございます、みな様。……あら、アリア様のそれはなんですの?」
初めて見るそれに、セレスティーナは少し怪訝な表情をする。
「お菓子です。今から仕上げをさせていただきたいのですが……火を使うことを、お許しいただけますか?」
「あら、まだ完成ではないのね。……いいわ、火を使う許可をします」
「ありがとうございます、セレスティーナ様」
アリアは自分を含め、五人分のお菓子をテーブルの上に置いて砂糖を振りかけた。
シャルルから受け取った火の魔道具をお菓子に向けると、魔道具から小さな炎が噴き出てお菓子の表面にかかる。
「まあ、表面が……!?」
今までこのような調理法を見たことはなかったのだろう。セレスティーナはもちろんのこと、全員が驚きと、お菓子からただよってくる香りに釘付けになっている。
表面に載った粗目の砂糖が焦げて、カリカリになった。