しあわせ食堂の異世界ご飯2
本日のメニュー、『お姫様のクレームブリュレ』の完成だ。
アリアが毎日、遅くまで試作を繰り返した一品だ。
日本とこの世界の食材はまったく同じというわけではなく、さらに日本製のほうが何倍も質がいい。
使う食材の種類や売っている店によっても品質は変わってくるため、実は何店舗からも材料を仕入れたりしていたのだ。
そのため、アリアの納得する味に仕上げるのは大変なのだ。
(特に砂糖は大きさがまばらなものが多くて、苦労したのよね)
細かいものは売っているが、日本のようにサラサラの砂糖はない。なので、ほかの材料と混ぜ合わせるときは時間がかかって苦労したのも思い出だ。
とはいえ、普段は定食メニューばかりだったので、デザート系を作るのはとても楽しかった。今後も定期的に作れたらいいなと、アリアは思う。
シャルルが完成したものを全員の前に置いていく。セレスティーナは不思議そうに見つめて、アリアに問いかける。
「アリア様、これはなんというお菓子かしら?」
「はい。こちらは、『クレームブリュレ』といいます。卵の黄身部分をメインに使い、ミルクや砂糖などを使って作ったお菓子です」
「まあ、卵の黄身だけを……?」
この世界では、食材の一部分だけを使うといったことは、あまりしない。
というか、そんなに調理方法や種類があるわけではないので、黄身だけ使った代表料理が存在していない……と言った方が正しいだろう。
不思議そうにクレームブリュレを眺めているセレスティーナに、アリアは食べ方を伝える。
「表面が少し硬くなっているので、こうやってスプーンで叩いて崩してから食べてください」
「不思議なお菓子ね……」
セレスティーナは表面をスプーンで割り、それをじっと見つめる。これはいったい何なのだろうと、頭の中で考えているのだろう。
大国の王女である彼女が食べたことのないものなんて、ないと言っても過言ではないのに。それをあっさり、アリアが覆してしまったのだ。
「表面はカリカリなのに、中はとても柔らかいのね。スプーンの上で、揺れるわ」
セレスティーナは、スプーンに載ったクレームブリュレを口に含む。
最初に口内へ広がるのは、わずかに焦げた苦み。けれどすぐに、それは中の生地によって味を塗り替えられてしまう。
硬い殻の中から顔をのぞかせたクリームは、まるで女王のように上品な甘みだった。己が甘さの頂点に立っているのだと、疑うことが許されないほどの絶対的な存在感。
だというのに、後味はとろけるほどに優しくて、セレスティーナの口の中にしっとりと甘い味が残る。
今まで食したことのない未知の味だと、セレスティーナは思う。
「口の中で、溶けて消えてしまうかのようだわ」
いくらでも食べられてしまいそう……というのが、セレスティーナの素直な感想だ。
「エストレーラにこんな優秀な料理人がいたなんて、驚いたわ」
「お褒めいただきまして、光栄です」
セレスティーナに続き、ローズマリーたちもクレームブリュレを食べて絶賛してくれる。この中で、似たようなお菓子を食べた経験がある人はいない。
「苦みの後に甘味がくるなんて、不思議だわ……」
でもそこがいいと、ローズマリーはアリアに微笑む。
セレスティーナもそれに同意して、あっという間にクレームブリュレを完食した。どの王女にも受け入れてもらい、アリアのお土産は大成功だ。
それからローズマリーのお土産であるフルーツを食べて、流行りのドレスや、各国のお洒落に関する話をしてお茶会は進んでいった。
アリアが毎日、遅くまで試作を繰り返した一品だ。
日本とこの世界の食材はまったく同じというわけではなく、さらに日本製のほうが何倍も質がいい。
使う食材の種類や売っている店によっても品質は変わってくるため、実は何店舗からも材料を仕入れたりしていたのだ。
そのため、アリアの納得する味に仕上げるのは大変なのだ。
(特に砂糖は大きさがまばらなものが多くて、苦労したのよね)
細かいものは売っているが、日本のようにサラサラの砂糖はない。なので、ほかの材料と混ぜ合わせるときは時間がかかって苦労したのも思い出だ。
とはいえ、普段は定食メニューばかりだったので、デザート系を作るのはとても楽しかった。今後も定期的に作れたらいいなと、アリアは思う。
シャルルが完成したものを全員の前に置いていく。セレスティーナは不思議そうに見つめて、アリアに問いかける。
「アリア様、これはなんというお菓子かしら?」
「はい。こちらは、『クレームブリュレ』といいます。卵の黄身部分をメインに使い、ミルクや砂糖などを使って作ったお菓子です」
「まあ、卵の黄身だけを……?」
この世界では、食材の一部分だけを使うといったことは、あまりしない。
というか、そんなに調理方法や種類があるわけではないので、黄身だけ使った代表料理が存在していない……と言った方が正しいだろう。
不思議そうにクレームブリュレを眺めているセレスティーナに、アリアは食べ方を伝える。
「表面が少し硬くなっているので、こうやってスプーンで叩いて崩してから食べてください」
「不思議なお菓子ね……」
セレスティーナは表面をスプーンで割り、それをじっと見つめる。これはいったい何なのだろうと、頭の中で考えているのだろう。
大国の王女である彼女が食べたことのないものなんて、ないと言っても過言ではないのに。それをあっさり、アリアが覆してしまったのだ。
「表面はカリカリなのに、中はとても柔らかいのね。スプーンの上で、揺れるわ」
セレスティーナは、スプーンに載ったクレームブリュレを口に含む。
最初に口内へ広がるのは、わずかに焦げた苦み。けれどすぐに、それは中の生地によって味を塗り替えられてしまう。
硬い殻の中から顔をのぞかせたクリームは、まるで女王のように上品な甘みだった。己が甘さの頂点に立っているのだと、疑うことが許されないほどの絶対的な存在感。
だというのに、後味はとろけるほどに優しくて、セレスティーナの口の中にしっとりと甘い味が残る。
今まで食したことのない未知の味だと、セレスティーナは思う。
「口の中で、溶けて消えてしまうかのようだわ」
いくらでも食べられてしまいそう……というのが、セレスティーナの素直な感想だ。
「エストレーラにこんな優秀な料理人がいたなんて、驚いたわ」
「お褒めいただきまして、光栄です」
セレスティーナに続き、ローズマリーたちもクレームブリュレを食べて絶賛してくれる。この中で、似たようなお菓子を食べた経験がある人はいない。
「苦みの後に甘味がくるなんて、不思議だわ……」
でもそこがいいと、ローズマリーはアリアに微笑む。
セレスティーナもそれに同意して、あっという間にクレームブリュレを完食した。どの王女にも受け入れてもらい、アリアのお土産は大成功だ。
それからローズマリーのお土産であるフルーツを食べて、流行りのドレスや、各国のお洒落に関する話をしてお茶会は進んでいった。