しあわせ食堂の異世界ご飯2
「そういえばみな様、陛下にはもうお会いになりまして?」
お茶会も後半に進んだところで、セレスティーナが本題を切り出す。それを聞き、アリアはドキリとする。
リントに会ってはいるけれど、公式の場でリベルトに会ったことは、まだない。
(王女の私は、リベルト陛下に会っていない……だから)
「わたくしはジェーロへ来た日に謁見をお願いしたのですが、お会いできなかったんです」
と、王女のときに行ったことだけを告げた。
アリアの言葉に続いて、ローズマリーたちも同様に会うことができなかったと言う。アリアを含めた五人の妃候補の誰もが、まだリベルトに謁見できていないのだ。
セレスティーナは小さくため息をついて、「そうなのね」と頷く。
「陛下はとてもお忙しくしてらっしゃるから……。それに、お優しい方だから、誰かひとりを贔屓してお会いになることもなさらないのよね」
ある種、自分たちは平等に扱われているのだとセレスティーナは話す。
(でも、誰とも結婚したくないって話だったような……)
アリアがジェーロに初めてきたとき、フォンクナー大臣から、リベルトは誰とも結婚をする意思がないという話をされている。
そして、妃候補を集めたのは配下の判断で、そこにリベルトの意思がなかったという説明もされた。
セレスティーナはそれを知らないのか、それとも承知しているけれど気にしないようにしているのか。しかしすぐに、それが後者だとわかる。
「陛下もあまり婚姻には乗り気ではないようだし……」
「今はまだ、仕事がお忙しいのでしょう? 仕方がないわ、セレスティーナ」
気だるげに言うセレスティーナに、ローズマリーがフォローを入れる。
もちろんそれは彼女だってわかってはいるのだが、さすがに数ヶ月も放って置かれるのは面白くないし、大国の王女であるプライドだって傷つく。
「ですから、こうしてみな様とお茶会をすることにしましたの」
セレスティーナはにっこり微笑み、容赦なく言葉を続ける。
「正直に言って、リベルト陛下に相応しいのは大国の王女であるわたくしですわ。ですから、みな様は国へお帰りになるのがいいと思うの」
「――!!」
まさかこんなストレートに言われるなんて、とアリアは驚く。
ほかの姫の反応を見ると、ローズマリーは笑みを崩してはいない。けれど、セレスティーナとは名前も呼び捨てで仲が良いというのは一目瞭然なので、このお茶会の趣旨も理解していた可能性は高いだろう。
シンシアは、きょとんと目を見開いている。
ジュリエッタは、どうしたらいいかわからないのだろう。顔を青くして、うつむいてしまった。
誰も反論しないからだろうか。セレスティーナは、自分がいかにリベルトに相応しいかということを話して聞かせる。
「大国であるジェーロと肩を並べられるのは、大国の姫であるわたくしだけですわ。わたくしは妃として相応しい教育を生まれたときから受けていますし、ジェーロが交流をしていない国との結びつきだって与えることができますもの」
あなたたちにそれができて? と、暗に言われているかのようだ。
「でも、わたくしだって無慈悲ではありませんわ!」
「……?」
「トワイライドとジェーロで婚姻を結んだ暁には、我が国と懇意にしているローズマリーのルーズベルはもちろん、ここにいるあなた方の国とも友好的に接するお約束をいたしますわ」
誇らしげに告げるセレスティーナに、アリアはなるほどと納得する。
大国はまだしも、アリアのような小国は婚姻によって庇護下に入りたいという政治的な思惑がある。セレスティーナは、身を引いて帰るのであれば、それを与えようと言うのだ。
リベルトを慕っているわけではないのなら、大帝国の王妃にならず庇護を受けられるセレスティーナの提案は負担が少なくとても好条件だろう。
(でも、私はリベルト陛下が好き……)
もちろん、アリアはこの提案を呑むことはできない。
ジュリエッタを見ると、必死で頷いている。
「小国のわたくしより、セレスティーナ様の方が陛下の隣にはお似合いですわ」
「そうでしょう? ジュリエッタ様は、よくわかっていらっしゃるのね。そういう方は、好きよ」
「ありがとうございます、セレスティーナ様」
お茶会も後半に進んだところで、セレスティーナが本題を切り出す。それを聞き、アリアはドキリとする。
リントに会ってはいるけれど、公式の場でリベルトに会ったことは、まだない。
(王女の私は、リベルト陛下に会っていない……だから)
「わたくしはジェーロへ来た日に謁見をお願いしたのですが、お会いできなかったんです」
と、王女のときに行ったことだけを告げた。
アリアの言葉に続いて、ローズマリーたちも同様に会うことができなかったと言う。アリアを含めた五人の妃候補の誰もが、まだリベルトに謁見できていないのだ。
セレスティーナは小さくため息をついて、「そうなのね」と頷く。
「陛下はとてもお忙しくしてらっしゃるから……。それに、お優しい方だから、誰かひとりを贔屓してお会いになることもなさらないのよね」
ある種、自分たちは平等に扱われているのだとセレスティーナは話す。
(でも、誰とも結婚したくないって話だったような……)
アリアがジェーロに初めてきたとき、フォンクナー大臣から、リベルトは誰とも結婚をする意思がないという話をされている。
そして、妃候補を集めたのは配下の判断で、そこにリベルトの意思がなかったという説明もされた。
セレスティーナはそれを知らないのか、それとも承知しているけれど気にしないようにしているのか。しかしすぐに、それが後者だとわかる。
「陛下もあまり婚姻には乗り気ではないようだし……」
「今はまだ、仕事がお忙しいのでしょう? 仕方がないわ、セレスティーナ」
気だるげに言うセレスティーナに、ローズマリーがフォローを入れる。
もちろんそれは彼女だってわかってはいるのだが、さすがに数ヶ月も放って置かれるのは面白くないし、大国の王女であるプライドだって傷つく。
「ですから、こうしてみな様とお茶会をすることにしましたの」
セレスティーナはにっこり微笑み、容赦なく言葉を続ける。
「正直に言って、リベルト陛下に相応しいのは大国の王女であるわたくしですわ。ですから、みな様は国へお帰りになるのがいいと思うの」
「――!!」
まさかこんなストレートに言われるなんて、とアリアは驚く。
ほかの姫の反応を見ると、ローズマリーは笑みを崩してはいない。けれど、セレスティーナとは名前も呼び捨てで仲が良いというのは一目瞭然なので、このお茶会の趣旨も理解していた可能性は高いだろう。
シンシアは、きょとんと目を見開いている。
ジュリエッタは、どうしたらいいかわからないのだろう。顔を青くして、うつむいてしまった。
誰も反論しないからだろうか。セレスティーナは、自分がいかにリベルトに相応しいかということを話して聞かせる。
「大国であるジェーロと肩を並べられるのは、大国の姫であるわたくしだけですわ。わたくしは妃として相応しい教育を生まれたときから受けていますし、ジェーロが交流をしていない国との結びつきだって与えることができますもの」
あなたたちにそれができて? と、暗に言われているかのようだ。
「でも、わたくしだって無慈悲ではありませんわ!」
「……?」
「トワイライドとジェーロで婚姻を結んだ暁には、我が国と懇意にしているローズマリーのルーズベルはもちろん、ここにいるあなた方の国とも友好的に接するお約束をいたしますわ」
誇らしげに告げるセレスティーナに、アリアはなるほどと納得する。
大国はまだしも、アリアのような小国は婚姻によって庇護下に入りたいという政治的な思惑がある。セレスティーナは、身を引いて帰るのであれば、それを与えようと言うのだ。
リベルトを慕っているわけではないのなら、大帝国の王妃にならず庇護を受けられるセレスティーナの提案は負担が少なくとても好条件だろう。
(でも、私はリベルト陛下が好き……)
もちろん、アリアはこの提案を呑むことはできない。
ジュリエッタを見ると、必死で頷いている。
「小国のわたくしより、セレスティーナ様の方が陛下の隣にはお似合いですわ」
「そうでしょう? ジュリエッタ様は、よくわかっていらっしゃるのね。そういう方は、好きよ」
「ありがとうございます、セレスティーナ様」