しあわせ食堂の異世界ご飯2
 どれも優雅で、自然あふれるエストレーラで自由に過ごしてきたアリアには勝ち目がないように見える。
(一応できるけど、得意かって言われると……微妙)
 むしろ、生まれたときから厳しく教育されてきたセレスティーナにこそ勇利な内容だろう。このままではいけないと思い、アリアは「あのっ」と手を上げる。
「アリア様?」
 会話に入ってきたアリアを、セレスティーナが不思議そうに見る。しかしアリアだって、自分の勝率を上げなければいけないので必死だ。
「ジェーロに関する内容にしてはいかがですか?」
 本当は勝負を止めましょうと言えたらよかったのだが、小国の王女であるアリアにそれは無理だ。ならばせめて、セレスティーナに有利にならない勝負に……と考えることしかできない。
 セレスティーナはアリアの提案に顔をしかめたけれど、幸いなことにローズマリーがアリアの案に賛成してくれた。加えて、彼女は勝負方法も提案してくれる。
「確かに、ジェーロの王妃を決める勝負ですものね。なら、今度の収穫祭の大会で一番大きなキノコを採った人が勝ちというのはいかがかしら」
「収穫祭?」
 シンシアは首を傾げ、「それは何?」とローズマリーに問う。
「秋に行うジェーロのお祭りですわ。冬に入る前、山の恵みに感謝するために行うそうよ」
 首都で行われる一番大きなお祭りで、街の広場にたくさん屋台などが出る。
 山の実りで料理をし、ローズマリーが言ったようにキノコの収穫を競う大会が催されたりもするのだ。
「確か、一番大きなキノコを収穫した人が優勝だと聞きました」
 アリアもカミルに少しだけ聞いていたので、大会の内容をシンシアに伝える。
「ありがとうございます、ローズマリー様、アリア様。わたくしはそれで構いません」
「もちろん、わたくしも構わなくてよ」
 シンシアが了承すると、当然とばかりにセレスティーナも許可を出す。アリアも渋々ながら頷き、秋の収穫祭で勝負をすることになってしまった。

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