しあわせ食堂の異世界ご飯2
山の木々は鮮やかな朱色になり、その見た目だけで人々を楽しませる。ひらりと舞うオレンジの葉が、地面に落ちているドングリの上にかぶさった。
アリアはその葉を拾いあげて、紅葉に色づく景色を堪能してから深呼吸を繰り返して山の空気で体を満たす。
お店の閉店後、アリアはシャルルとカミルの三人で山へやってきた。
街から少し歩いたところにある大きな山で、浅い場所でキノコの採取ができるのだ。
「紅葉だけでも素敵なのに、秋の山は木の実やキノコ類の食材も豊富で……まるで楽園よね」
「テンション高いなぁ……」
竹で編んだカゴを背負ってはしゃぐアリアに、カミルは笑いをもらす。なだらかな山ではあるが、急斜面がないわけではないのだ。
「足元には気をつけろよ、アリア」
「うん、わかってるよ! あっ! シャルル、このキノコ大きくない!?」
カミルの注意を聞いてはいるものの、アリアの意識は見つけたキノコに移る。シャルルもアリアの下へ小走りで向かって、見つけたキノコに手を叩く。
「大きいと思います! これなら、きっと私たちの優勝間違いなし――あ」
「シャルル?」
突然言葉を止めたシャルルに、アリアとカミルは首を傾げる。
どうしたの? そうアリアが告げようとすると、シャルルは「しっ!」と口元に指を立てて周囲を見回した。
「…………!」
アリアとカミルは口元を手で押さえて、シャルルの言うとおり声を出さないようにする。
(何かあった……?)
シャルルは意味なくこんなことをする子ではないので、アリアも辺りに注意を巡らせていく。もしかしたら、狼など危険な動物がいる可能性もある。
アリアには戦う力がないので、そうなれば足手まといにならないようシャルルの指示に従うことしかできない。
「あ……」
視線を巡らせていたら、見つけてしまった。
それは、騎士服に身を包んだ数人の男。ジェーロでは軍服が主流なので、他国の人間だろうかと考え……アリアは気づく。
(あれ、トワイライド王国の紋章だ!)
騎士のマントに描かれているそれは、アリアにきた手紙の封蝋の紋章と同じものだ。つまり、山に来ている数人の男たちはセレスティーナの騎士だということがわかる。
間違いなく、アリアと同様にキノコの情報収集に来たのだろう。
「おい、誰だあれ?」
カミルが小さな声で、アリアとシャルルに問う。
「……わからないけれど、おそらく私たちと同じ大会参加者じゃないかな? ほら、他国の人間だって参加できるじゃない」
「まあ、確かにできるけど」
そこまで気合をいれるもんか? と、カミルは不思議そうにしている。
「アリアも優勝するためにこうして山を歩いてるわけだし、今年はかなり気合の入った参加者が多いってことか?」
まさか、王妃の座がかかっているからとは言えるわけがない。アリアとしても事情は話したくないので、その単純さに少し助けられる。
カミルは簡単に考えて、ひとり結論を出す。
アリアは曖昧に微笑んで、頷く。
男たちからゆっくり距離を取り、シャルルを先頭にアリアたちは今いる場所から離れた。
アリアはその葉を拾いあげて、紅葉に色づく景色を堪能してから深呼吸を繰り返して山の空気で体を満たす。
お店の閉店後、アリアはシャルルとカミルの三人で山へやってきた。
街から少し歩いたところにある大きな山で、浅い場所でキノコの採取ができるのだ。
「紅葉だけでも素敵なのに、秋の山は木の実やキノコ類の食材も豊富で……まるで楽園よね」
「テンション高いなぁ……」
竹で編んだカゴを背負ってはしゃぐアリアに、カミルは笑いをもらす。なだらかな山ではあるが、急斜面がないわけではないのだ。
「足元には気をつけろよ、アリア」
「うん、わかってるよ! あっ! シャルル、このキノコ大きくない!?」
カミルの注意を聞いてはいるものの、アリアの意識は見つけたキノコに移る。シャルルもアリアの下へ小走りで向かって、見つけたキノコに手を叩く。
「大きいと思います! これなら、きっと私たちの優勝間違いなし――あ」
「シャルル?」
突然言葉を止めたシャルルに、アリアとカミルは首を傾げる。
どうしたの? そうアリアが告げようとすると、シャルルは「しっ!」と口元に指を立てて周囲を見回した。
「…………!」
アリアとカミルは口元を手で押さえて、シャルルの言うとおり声を出さないようにする。
(何かあった……?)
シャルルは意味なくこんなことをする子ではないので、アリアも辺りに注意を巡らせていく。もしかしたら、狼など危険な動物がいる可能性もある。
アリアには戦う力がないので、そうなれば足手まといにならないようシャルルの指示に従うことしかできない。
「あ……」
視線を巡らせていたら、見つけてしまった。
それは、騎士服に身を包んだ数人の男。ジェーロでは軍服が主流なので、他国の人間だろうかと考え……アリアは気づく。
(あれ、トワイライド王国の紋章だ!)
騎士のマントに描かれているそれは、アリアにきた手紙の封蝋の紋章と同じものだ。つまり、山に来ている数人の男たちはセレスティーナの騎士だということがわかる。
間違いなく、アリアと同様にキノコの情報収集に来たのだろう。
「おい、誰だあれ?」
カミルが小さな声で、アリアとシャルルに問う。
「……わからないけれど、おそらく私たちと同じ大会参加者じゃないかな? ほら、他国の人間だって参加できるじゃない」
「まあ、確かにできるけど」
そこまで気合をいれるもんか? と、カミルは不思議そうにしている。
「アリアも優勝するためにこうして山を歩いてるわけだし、今年はかなり気合の入った参加者が多いってことか?」
まさか、王妃の座がかかっているからとは言えるわけがない。アリアとしても事情は話したくないので、その単純さに少し助けられる。
カミルは簡単に考えて、ひとり結論を出す。
アリアは曖昧に微笑んで、頷く。
男たちからゆっくり距離を取り、シャルルを先頭にアリアたちは今いる場所から離れた。