しあわせ食堂の異世界ご飯2
しあわせ食堂が営業時間になると、開店前から並んでいたお客さんで満員になる。
常連さんのひとりは今日も朝からカレーを美味しそうに食べて、給仕をしているカミルに「今日もアリアちゃんのカレーは美味いなぁ」と声をかけた。
しかしカミルはにんまり笑って、チッチッチと指を振る。
「そのカレー、ほとんど俺が作ったんだよ!」
「な、なんじゃってー!?」
ふふんとどや顔で告げるカミルに、常連のおじいちゃんは震える声で驚いた。だってまさか、カミルが作っているなんて考えたこともなかったのだ。
というか。
「お前、料理できたのか……?」
それならば、エマではなくカミルが調理担当をしていればしあわせ食堂が潰れそうになる……なんてことにはならなかったのではとおじいちゃんが告げる。
カミルは苦笑しながら、首を振った。
「俺の腕前は、普通だよ。最近、アリアに料理を教えてもらってるんだ」
「ああ、そういうことじゃったのか。でも、お前はカールの息子だから、きっと上達もはやいじゃろうて」
「……サンキュ」
料理人だった父親に恥ずかしくないよう、精いっぱい頑張るよとカミルは照れながらも笑みを浮かべる。
「まだまだあるから、たくさん食ってくれよな」
「あほか! わしのような年寄りは、一杯で十分じゃ!」
「それもそうか」
よっぽど褒めてもらえたのが嬉しかったのだろう。カミルはハハッと笑って、違うテーブルへ注文を取りに行った。
アリアは厨房からお店を覗いて、常連客と話しているカミルを見る。その様子はとても楽しそうだ。
(カミルは料理人に向いてそう)
実は嫌々料理をしていたら……と、少し心配だった。
「カレーになれたら、ハンバーグの焼き加減とかを……え?」
教えたいことはたくさんある。
そう思っていたのだが、予期せぬお客さんがしあわせ食堂へやってきた。店内にいるシャルルやカミルはもちろん、食事をしているお客さんまでもがざわめく。
アリアは一瞬で顔を青くする。
「なんでここにいるの、ローズマリー様……!」
ぼそりとその名前を呟いて、アリアはいったいどういうことだと頭を抱える。
外出用のドレスを身にまとったローズマリーは、にこにこ微笑みながら席へ着く。案内したカミルは、どうしたらいいかわからないようで慌てている。
ローズマリーにはアリアが街で暮らしていることも、料理人だということも伝えてはいない。なので、どうしてここへ来たのかがわからない。
(もしかして、しあわせ食堂の噂が王城まで届いた?)
それで気になり、食べに来てくれたのだろうか。
――なんて、都合のいいことは起きなかった。
店内をきょろきょろ見回したローズマリーは、アリアを見つけると手を振ってきたのだ。
間違いなく、お目当てはアリアだった。
常連さんのひとりは今日も朝からカレーを美味しそうに食べて、給仕をしているカミルに「今日もアリアちゃんのカレーは美味いなぁ」と声をかけた。
しかしカミルはにんまり笑って、チッチッチと指を振る。
「そのカレー、ほとんど俺が作ったんだよ!」
「な、なんじゃってー!?」
ふふんとどや顔で告げるカミルに、常連のおじいちゃんは震える声で驚いた。だってまさか、カミルが作っているなんて考えたこともなかったのだ。
というか。
「お前、料理できたのか……?」
それならば、エマではなくカミルが調理担当をしていればしあわせ食堂が潰れそうになる……なんてことにはならなかったのではとおじいちゃんが告げる。
カミルは苦笑しながら、首を振った。
「俺の腕前は、普通だよ。最近、アリアに料理を教えてもらってるんだ」
「ああ、そういうことじゃったのか。でも、お前はカールの息子だから、きっと上達もはやいじゃろうて」
「……サンキュ」
料理人だった父親に恥ずかしくないよう、精いっぱい頑張るよとカミルは照れながらも笑みを浮かべる。
「まだまだあるから、たくさん食ってくれよな」
「あほか! わしのような年寄りは、一杯で十分じゃ!」
「それもそうか」
よっぽど褒めてもらえたのが嬉しかったのだろう。カミルはハハッと笑って、違うテーブルへ注文を取りに行った。
アリアは厨房からお店を覗いて、常連客と話しているカミルを見る。その様子はとても楽しそうだ。
(カミルは料理人に向いてそう)
実は嫌々料理をしていたら……と、少し心配だった。
「カレーになれたら、ハンバーグの焼き加減とかを……え?」
教えたいことはたくさんある。
そう思っていたのだが、予期せぬお客さんがしあわせ食堂へやってきた。店内にいるシャルルやカミルはもちろん、食事をしているお客さんまでもがざわめく。
アリアは一瞬で顔を青くする。
「なんでここにいるの、ローズマリー様……!」
ぼそりとその名前を呟いて、アリアはいったいどういうことだと頭を抱える。
外出用のドレスを身にまとったローズマリーは、にこにこ微笑みながら席へ着く。案内したカミルは、どうしたらいいかわからないようで慌てている。
ローズマリーにはアリアが街で暮らしていることも、料理人だということも伝えてはいない。なので、どうしてここへ来たのかがわからない。
(もしかして、しあわせ食堂の噂が王城まで届いた?)
それで気になり、食べに来てくれたのだろうか。
――なんて、都合のいいことは起きなかった。
店内をきょろきょろ見回したローズマリーは、アリアを見つけると手を振ってきたのだ。
間違いなく、お目当てはアリアだった。