しあわせ食堂の異世界ご飯2
「どうしてこんなことに……」
アリアが頭を押さえながらため息をつくと、食器を洗っていたエマが心配しながらやってきた。
「アリアちゃんの知り合いかい? 誰だかはわからないけど、貴族のご令嬢だろう?」
「……まあ、そんな感じです。ちょっと行ってきますね」
心配するエマに大丈夫だと告げて、アリアはローズマリーの下へ行く。
突然やって来たことや、何を企んでいるかなど、聞かなければならないことは多い。キノコ大会で優勝したのだから、そっとしておいてくれたらいいのに……。
「ごきげんよう、アリア様」
「ごきげんよう、ローズマリー様。まさか、ここへいらっしゃるとは思ってもみませんでした。本日は、わたくしにご用件でしょうか? それともまさか、料理を?」
狭い店内なので、声を潜めてローズマリーへ声をかける。
これ以上騒ぎになる前に帰ってほしいというのが、アリアの正直な気持ちだ。もしローズマリーが料理を欲しているのであれば、営業時間外に対応したい。
ローズマリーはくすくす笑って、アリアを見る。
「もちろん、アリア様に会いに来たのよ。けれど、料理を食べてみたいと思っているのも本当。部下に調べさせたら、アリア様が食堂で働いていると報告があったから驚いたの」
特に隠すこともなく、アリアのことを調べたと告げられた。
「ねぇ、アリア様。わたくしたちは退屈な王城にいるのに、あなた一人だけがとーっても楽しそうね。こんなところで料理をして、ああ、わたくし羨ましいわ」
「……っ!」
確かに王城にいるのが退屈だろうということは、アリアも想像できる。
だからといって、今のアリアにローズマリーを満足させてあげられるような手段は持ち合わせていない。いったい、アリアにどうしろというのか。
にこにこ笑っているローズマリーに、アリアは観念して問いかける。
「いったい何が望みなんですか? ローズマリー様」
自分にできることであればいいけれど、無理難題をふっかけられてしまったらとビクビクしてしまう。
「あらぁ、そんなに震えなくても、取って食ったりはしないわ」
だから怖がる必要なんてないのだと、ローズマリーは微笑む。
「アリア様はセレスティーナと勝負をしたのだから、わたくしともいたしましょう? アリア様が勝てたら、あなたがここで働いていることは黙っていてあげる」
「それは……っ」
もし勝負に負けたり、受けなかったら王城に滞在しておらず、しあわせ食堂で働いていることをばらすと言っているのだ。
(断れるわけ、ないじゃない……!)
リベルトやローレンツに迷惑がかかるのはもちろんだけれど、事情を知らないエマやカミルにだって困るだろう。
そもそも、アリアの正体がばれた時点で街へ滞在する許可は得られないのだ。
勝負の条件もそうだけれど、大国のローズマリーからの提案。アリアは断れるはずなく、力なく頷いた。
「……わかりました」
アリアは小さく頷き、ローズマリーとの勝負を了承する。すぐにローズマリーは満面の笑みを浮かべて、手を合わせて喜ぶ。
「ふふ、そうでなくてはね。ああ、そんなお顔をしないで、アリア様。別に難しいことをしようというわけではありませんのよ?」
気を楽にしてとローズマリーは微笑んでいるが、楽にできるわけがない。
緊張して変な汗をかきながらも、アリアは勝負内容を問う。
「そうでしたわね。勝負方法は、『わたくしを楽しませる料理を作る』なんていうのはどうかしら」
「ローズマリー様を、ですか?」
アリアが頭を押さえながらため息をつくと、食器を洗っていたエマが心配しながらやってきた。
「アリアちゃんの知り合いかい? 誰だかはわからないけど、貴族のご令嬢だろう?」
「……まあ、そんな感じです。ちょっと行ってきますね」
心配するエマに大丈夫だと告げて、アリアはローズマリーの下へ行く。
突然やって来たことや、何を企んでいるかなど、聞かなければならないことは多い。キノコ大会で優勝したのだから、そっとしておいてくれたらいいのに……。
「ごきげんよう、アリア様」
「ごきげんよう、ローズマリー様。まさか、ここへいらっしゃるとは思ってもみませんでした。本日は、わたくしにご用件でしょうか? それともまさか、料理を?」
狭い店内なので、声を潜めてローズマリーへ声をかける。
これ以上騒ぎになる前に帰ってほしいというのが、アリアの正直な気持ちだ。もしローズマリーが料理を欲しているのであれば、営業時間外に対応したい。
ローズマリーはくすくす笑って、アリアを見る。
「もちろん、アリア様に会いに来たのよ。けれど、料理を食べてみたいと思っているのも本当。部下に調べさせたら、アリア様が食堂で働いていると報告があったから驚いたの」
特に隠すこともなく、アリアのことを調べたと告げられた。
「ねぇ、アリア様。わたくしたちは退屈な王城にいるのに、あなた一人だけがとーっても楽しそうね。こんなところで料理をして、ああ、わたくし羨ましいわ」
「……っ!」
確かに王城にいるのが退屈だろうということは、アリアも想像できる。
だからといって、今のアリアにローズマリーを満足させてあげられるような手段は持ち合わせていない。いったい、アリアにどうしろというのか。
にこにこ笑っているローズマリーに、アリアは観念して問いかける。
「いったい何が望みなんですか? ローズマリー様」
自分にできることであればいいけれど、無理難題をふっかけられてしまったらとビクビクしてしまう。
「あらぁ、そんなに震えなくても、取って食ったりはしないわ」
だから怖がる必要なんてないのだと、ローズマリーは微笑む。
「アリア様はセレスティーナと勝負をしたのだから、わたくしともいたしましょう? アリア様が勝てたら、あなたがここで働いていることは黙っていてあげる」
「それは……っ」
もし勝負に負けたり、受けなかったら王城に滞在しておらず、しあわせ食堂で働いていることをばらすと言っているのだ。
(断れるわけ、ないじゃない……!)
リベルトやローレンツに迷惑がかかるのはもちろんだけれど、事情を知らないエマやカミルにだって困るだろう。
そもそも、アリアの正体がばれた時点で街へ滞在する許可は得られないのだ。
勝負の条件もそうだけれど、大国のローズマリーからの提案。アリアは断れるはずなく、力なく頷いた。
「……わかりました」
アリアは小さく頷き、ローズマリーとの勝負を了承する。すぐにローズマリーは満面の笑みを浮かべて、手を合わせて喜ぶ。
「ふふ、そうでなくてはね。ああ、そんなお顔をしないで、アリア様。別に難しいことをしようというわけではありませんのよ?」
気を楽にしてとローズマリーは微笑んでいるが、楽にできるわけがない。
緊張して変な汗をかきながらも、アリアは勝負内容を問う。
「そうでしたわね。勝負方法は、『わたくしを楽しませる料理を作る』なんていうのはどうかしら」
「ローズマリー様を、ですか?」