しあわせ食堂の異世界ご飯2
 営業が終了後、アリアは片付けを終わらせて自室へ戻る。
 そこで考えるのは、今後のことだ。
「リベルト陛下には待っているように言われたけど、それでいいのかな……」
 エストレーラは小国だ。
 けれど、王女として彼の隣に立つことくらいはできる。後ろ盾になれるほどの力がある国ではないが、少しは支えられることもあるはずだ。
「国力があれば、今頃リベルト陛下の隣にいられたのかな? ああ、でもそれはきっと無理ね」
 大国の姫たちも、リベルトと謁見できていないのだ。
 力の問題ではなく、彼自身の問題なのだろう。けれどそうなると、さらに力になれないことにもどかしさを感じてしまう。
「私は特別だなんて……思ったら駄目ね」
 でも、どうしようもなく期待はしてしまう。
 それに、セレスティーナたちとの勝負に勝ったのに何もしていない。
 そろそろ、セレスティーナからなぜ行動しないのと怒られてしまうのではないだろうか。
「もっといろいろ聞いておけばよかったなぁ」
 リントとしてしあわせ食堂にいたリベルトからは、体の負担になってはいけないと事件のことはあまり聞かなかった。
 今になってそれを後悔する。
 こんなにもやもやするのなら、思い切って聞いておけばよかったのに。
「…………」
 よし、聞きに行こう。
 そうと決まればさっそく行動あるのみだ。
 幸いなことに、明日はしあわせ食堂の定休日。帰りが遅くなってもいいし、なんなら王城に用意されている自室に泊っても問題はない。
 アリアは自室の窓から顔を出して、庭で鍛錬をしているシャルルに声をかける。
「シャルル、出かけたいからつきあってほしいの!」
「はいー!」
 すぐに了承の返事をくれたシャルルと一緒に、アリアは王城へ向かった。

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