しあわせ食堂の異世界ご飯2
開店と同時に、店内は満員になった。
「アリア、カレー三つとハンバーグ二つ。あと、卵焼きも頼む」
「はーい」
カミルからの注文を聞いて、アリアはさっそく料理に取りかかる。とはいえ、前日から仕込みをし、営業中はすぐ提供できるようにしているのであまり時間はかからない。
しあわせ食堂のメニューは、『カレー』『ハンバーグ』の二種類がメイン料理。そして、『ストロガノフ』と『卵焼き』の二種類が単品メニューとして用意されている。
アリアが卵焼きを作っている間に、エマはカレーをよそってカミルに渡す。その際に彼女が店内を見回すと、もうすっかり常連客ばかりだ。
耳を傾けると、楽しそうに食事をするお客さんの声が聞こえてくる。
「いやー、久しぶりのハンバーグだ! めっちゃ美味い!!」
「だよな! 家でもかみさんが作ってはくれるんだけど、やっぱここのハンバーグは格が違うんだよなぁ」
「なんだ、朝からのろけか?」
ふたり組の男性客や、親子で来てくれている人もいる。
「ママ、カレー美味しい!」
「本当ね。お野菜もたくさん入っているから、いいわねぇ」
エマは満足げに微笑んで、料理をするアリアを見る。彼女がいなければ、もうこの店は畳んで違う仕事をしていたはずだ。
「本当、アリアちゃんはすごいね」
「え?」
ぽつりともらしたエマの声に、アリアが反応する。ちょうど卵焼きができたので、切ってお皿に盛りつけたところだ。
「もうアリアちゃんがここにきて数か月経つのに、いまだに満員の店内を見ると嬉しくなっちまうのさ」
「エマさん……」
「アリアちゃんには、感謝してもしきれないよ」
「私も、こうしてエマさんに雇ってもらえたことを感謝してるんです。もっともっと、頑張ってお客さんを呼ばなきゃいけませんね」
今後は、カミルにも料理を教えてメニューを増やしていきたいとも思っている。しあわせ食堂でやりたいことは、まだまだたくさんあるのだ。
「頼もしいねぇ」
アリアとエマは笑いながら、注文の入った料理をどんどん準備していった。
開店から三十分ほどたったころ、アリアは店内にいるシャルルから呼ばれて顔を出す。何か問題でもあったかなと思ったが、シャルルがいたのはリントとローレンツのテーブだ。
「シャルル、どうしたの?」
「リントさんとローレンツがお帰りになるそうなので」
どうやら、シャルルが気を利かせて呼んでくれたらしい。
同時に、門番はすぐに食べて帰ったと聞いて苦笑する。やはり皇帝と同じ空間で食事をする……というのは、緊張してしまうのだろう。
リントはやってきたアリアを見て、「ごちそうさま」と告げる。
「ハンバーグというのは初めて食べたが、柔らかくて美味いな。今まで食べられなかったのが、悔しいくらいだ」
「ええ、とても美味しかったです」
「ありがとうございます」
リントとローレンツが立ち上がり、会計の前に持っていた袋をアリアへ差し出した。反射的に受け取ったが、ずしりと重みがある。
「おふたりのお口に合って、よかったです。ところで、この袋は?」
いったい何が入っているのだろうか?
「アリアなら料理できるかと、持ってきたんだ。開けてみてくれ」
「何かの材料ですか? ……わあ、すごい!」
アリアが袋を開くと、そこにはたくさんの栗が入っていた。確かに栗であれば、この重みも納得できる。
(今はちょうど栗が旬だもんね)
喜ぶアリアを見て、リントは頬を緩める。
「普段はそのままゆでるくらいしかしないんだが、何か作れるのか?」
「ああ、ゆで栗にしていたんですね。そうですね、私は栗ご飯が好きで、よく作っていましたよ」
「栗をご飯に入れるのか……?」
アリアの言葉を聞き、リントは怪訝そうにする。
今まで栗を米と一緒に炊いたことはなかったのだろう。
「アリア、カレー三つとハンバーグ二つ。あと、卵焼きも頼む」
「はーい」
カミルからの注文を聞いて、アリアはさっそく料理に取りかかる。とはいえ、前日から仕込みをし、営業中はすぐ提供できるようにしているのであまり時間はかからない。
しあわせ食堂のメニューは、『カレー』『ハンバーグ』の二種類がメイン料理。そして、『ストロガノフ』と『卵焼き』の二種類が単品メニューとして用意されている。
アリアが卵焼きを作っている間に、エマはカレーをよそってカミルに渡す。その際に彼女が店内を見回すと、もうすっかり常連客ばかりだ。
耳を傾けると、楽しそうに食事をするお客さんの声が聞こえてくる。
「いやー、久しぶりのハンバーグだ! めっちゃ美味い!!」
「だよな! 家でもかみさんが作ってはくれるんだけど、やっぱここのハンバーグは格が違うんだよなぁ」
「なんだ、朝からのろけか?」
ふたり組の男性客や、親子で来てくれている人もいる。
「ママ、カレー美味しい!」
「本当ね。お野菜もたくさん入っているから、いいわねぇ」
エマは満足げに微笑んで、料理をするアリアを見る。彼女がいなければ、もうこの店は畳んで違う仕事をしていたはずだ。
「本当、アリアちゃんはすごいね」
「え?」
ぽつりともらしたエマの声に、アリアが反応する。ちょうど卵焼きができたので、切ってお皿に盛りつけたところだ。
「もうアリアちゃんがここにきて数か月経つのに、いまだに満員の店内を見ると嬉しくなっちまうのさ」
「エマさん……」
「アリアちゃんには、感謝してもしきれないよ」
「私も、こうしてエマさんに雇ってもらえたことを感謝してるんです。もっともっと、頑張ってお客さんを呼ばなきゃいけませんね」
今後は、カミルにも料理を教えてメニューを増やしていきたいとも思っている。しあわせ食堂でやりたいことは、まだまだたくさんあるのだ。
「頼もしいねぇ」
アリアとエマは笑いながら、注文の入った料理をどんどん準備していった。
開店から三十分ほどたったころ、アリアは店内にいるシャルルから呼ばれて顔を出す。何か問題でもあったかなと思ったが、シャルルがいたのはリントとローレンツのテーブだ。
「シャルル、どうしたの?」
「リントさんとローレンツがお帰りになるそうなので」
どうやら、シャルルが気を利かせて呼んでくれたらしい。
同時に、門番はすぐに食べて帰ったと聞いて苦笑する。やはり皇帝と同じ空間で食事をする……というのは、緊張してしまうのだろう。
リントはやってきたアリアを見て、「ごちそうさま」と告げる。
「ハンバーグというのは初めて食べたが、柔らかくて美味いな。今まで食べられなかったのが、悔しいくらいだ」
「ええ、とても美味しかったです」
「ありがとうございます」
リントとローレンツが立ち上がり、会計の前に持っていた袋をアリアへ差し出した。反射的に受け取ったが、ずしりと重みがある。
「おふたりのお口に合って、よかったです。ところで、この袋は?」
いったい何が入っているのだろうか?
「アリアなら料理できるかと、持ってきたんだ。開けてみてくれ」
「何かの材料ですか? ……わあ、すごい!」
アリアが袋を開くと、そこにはたくさんの栗が入っていた。確かに栗であれば、この重みも納得できる。
(今はちょうど栗が旬だもんね)
喜ぶアリアを見て、リントは頬を緩める。
「普段はそのままゆでるくらいしかしないんだが、何か作れるのか?」
「ああ、ゆで栗にしていたんですね。そうですね、私は栗ご飯が好きで、よく作っていましたよ」
「栗をご飯に入れるのか……?」
アリアの言葉を聞き、リントは怪訝そうにする。
今まで栗を米と一緒に炊いたことはなかったのだろう。